動物に感情があるのかどうかというのは長い間論争されてきたことだ。また、言葉を扱うことが人間と動物の境目だとされたり、社会性の高さこそが人間の特徴だとされてきた。墓参りするという点も人間ぐらいしか思い当たらない。しかし、ゾウも仲間の死を悼み、悲しむという。
ゾウの社会
地球上のゾウはアフリカゾウとアジアゾウに分類される。ゾウの寿命は60歳程度で、小ゾウは女系の群れで育てられる。ゾウは主に周波数10Hzあたりの人間では聞き取れない超低周波を使って、仲間と会話する。約10㎞圏内の仲間に向けて周波を出すが、好天気や深夜などの条件であれば最大100㎞あたり先の仲間と意思疎通ができるという。
周波を出すほかにも、耳や鼻などの身振りや鼻の絡め合い、ひづめから出る化学物質のにおいなどを使用して、複雑なコミュニケーションをとっている。また、ゾウの知能はとても高く、鏡を見て自身の姿を認知できるという。高度な離散集合社会を築けるのもこの高知能がなせるものである。
ゾウの弔い
ゾウは一般的に仲間の遺体に関心を示し、遺体に近寄り、触る。遺体を持ち上げたり、引っ張ったりして、鳴き声を上げる。涙を流すゾウもいる。また、遺体を触るのは、優れた嗅覚でにおいを識別し、遺体の身元を調べているという。ゾウの中には墓参りのように遺体のもとを何度も訪れ、しばらく遺体のところに滞在した後、遺体から去っていくものもいる。
人とゾウ
ゾウが弔うのはゾウ同士だけではない。南アフリカのローレンス・アンソニーは野生のゾウの群れを養子にして、自分で建てた保護区で暮らした。最初はゾウたちは反抗したが、ローレンスの献身的な世話や問いかけにより、ローレンスとゾウたちは心を通じ合わせるようになり、愛情を深めていった。ローレンスは戦争中の国からゾウを救出するなどの偉業も成し遂げていった。
時が経ち、ローレンスは心臓発作により亡くなった。ローレンスが世話したゾウたちが、どうやって彼の死を知ったのか、ゾウのリーダーが20㎞の道のりを仲間を率いていき、ローレンスの家に集まり、一列になって家を囲んだ。合計31頭のゾウが飲み食いせず二日の間並んで佇んだ。そして、荘厳な空気で、帰っていった。
弔う動物
ゾウの他にも、イルカやアシカ、オオカミ、カササギなどが仲間の死を悼む行動する姿を記録されている。また、犬も亡くなった飼い主の寝床に故人を偲ぶようにいる姿が見られている。死を弔うだけでなく、ゴリラはその屈強な見た目とは裏腹に、パートナーの死によって、うつ病になるゴリラもいるという。人間と動物は、仲間を思う気持ちという点で、そう離れていないようだ。
参考資料
■本当にあった話:死を悲しむゾウの群れ
■仲間の死を悼む象、遺体が腐った後もずっと関心を持ち続けている(米研究)
■ゾウの生態 – Japan Tiger Elephant Organization
■ゾウの生態とは?詳しく解説!