最近、関西で散骨の問い合わせが非常に増えているそうだ。理由としては、大阪天王寺区にある一心寺がご納骨の受け入れ制限を行ったことが一つの要因となっている。ここでは、「一心寺」についてと、それに伴う海洋散骨の需要について考える。
お骨沸・納骨の寺 一心寺
ここ数年、お墓に対する考え方が多様化しており、墓じまいという言葉が出てきているのはご存知かと思われる。核家族化が進む中、お墓の形態もさまざまで、そもそもお墓を持たず手元供養を行う家庭や、お墓にこだわらず自然葬、散骨なども話題となっている。
一心寺は浄土宗のお寺であり、納骨された遺骨を粉砕し、練造される佛様が有名である。そのため、お骨佛の寺と呼ばれており、受け入れを行ったご遺骨を10年ごとにまとめ、阿弥陀如来像を造立している。戦災で焼失したものを合わせて14体造立されており130年以上の歴史で、およそ200万人に故人が阿弥陀様の姿になっている。上記のようなお墓事情もあり、年々納骨に訪れる方は増えているという。
おせがきの寺 一心寺
一心寺はおせがきの寺とも言われている。おせがきとは餓鬼道におちて苦しむ霊を供養する法要である。餓鬼道は、人はなくなると輪廻転生を繰り返すと言われる六道輪廻の1つであるが、生前の行いのせいでここにいくことになってしまうと、口にするものが炎にかわってしまうため、常に飢えと渇きに苦しむことになる。餓鬼道におちる人は、生前に強欲だった人、他人に分け与えず独り占めをした人、ケチな人などである。
おせがきは漢字で、お施餓鬼と書き、餓鬼道にいってしまった餓鬼に施しをするという意味で、法要により供養をすることである。一心寺では現在、新型コロナウイルス蔓延対策として、おせがき法要を休止している。
一心寺への納骨は2〜3万円だった
ご遺骨で作られた佛様や、ご遺骨を納めることができる佛様は全国に存在する。仏像葬ともいわれ、大阪の一心寺をはじめ、東京の本寿院、埼玉の広徳寺などが挙げられる。
本寿院と広徳寺は、一心寺とは少し異なり、ご遺骨を阿弥陀如来像の胎内に分骨し、永代供養される。費用は、全国的に見て2~3万ほどであり、依頼が増えるのもたしかである。そして佛様がお墓になるというのは、ものすごく特別感があるのではないだろうか。
一心寺のご遺骨受け入れ制限が行われた
明治20年から続く、一心寺のお骨佛供養であるが、本来は分骨のみを以って造立していたという。しかし、世相の変化に合わせ全骨の受け入れを行っていたことや、現代のお墓事情によりご遺骨の持ち込みが増えた結果、令和3年1月1日以降、納骨の受け入れ制限をすることに決めた。
現在、小骨壺のみ納骨を受け入れており、また改葬納骨(他施設からの移転、墓じまい・墓出し等による改葬)も受け入れていない。
粉骨と海洋散骨
このような状況を受け、海洋散骨の問い合わせが急増したということである。また、粉骨を行う会社もあり、粉骨をすることで一心寺に持ち込みが可能な小骨壺サイズに収まるようにし、残りのご遺骨を海に散骨をするという提案を行っている。粉骨は、機械を使ったものや、手作業で丁寧に行ってくれるものもある。海洋散骨以外にも、樹木葬で自然に返したい場合や、ご自宅で手元供養をしたいという際にも、需要がある。
最近では、宇宙葬といった言葉もではじめるぐらい、多様化するお墓と散骨事情であるが、終活の一つとして、みなさんも自身のお骨をどうしてほしいか考えてみてはどうだろうか。