スマートフォン向けアプリゲーム「ウマ娘プリティダービー」が人気を博している。実際の競走馬をモデルにしたキャラクターを育成するゲームで、個性的で作りこまれたキャラクターが、多くのユーザーを楽しませている。馬は、古来より人との関わり合いが深い動物の一種だ。古代の壁画には人間と共にその姿が描かれていたり、遺跡からの出土品に馬を模したものや馬具があったりする。また、馬にまつわる信仰や伝承も世界各地に多く伝わっていることからも、人との関わり合いの深さは伺うことができる。
ギリシャ神話に登場する馬
ギリシャ神話には、さまざまな馬が登場する。メドゥーサの血から生まれたとされる翼の生えた馬・ペガサスは、後世のファンタジー作品にも多くの影響を与えている。上半身が人間、下半身が馬の種族であるケンタウルスも有名である。これらは、空に輝く星座にもなっている。また、生物としての馬ではないが、トロイア戦争における重要な装置として、内部に人が隠れることができる「トロイの木馬」が登場する。また、旧約聖書や西洋の伝承には、額に一本の角が生えた馬・ユニコーンが登場する。
西洋のお守り「蹄鉄」
蹄鉄とは、馬の蹄を守るために装着される、U字型をした保護具である。西洋では、魔除けや幸運のアイテムとされている。諸説あるが、ケルト神話において、騎馬と鉄器を用いて敵を倒したことが由来であるとされる。魔除けのために扉に取り付けられたり、アクセサリーのモチーフとされたり、現在でも多く用いられている。
日本における馬と信仰
日本の神道においても、馬は重要な役割を果たしている。馬は、神様の乗り物とされた。平安時代から、人々は願いをかなえるために、生きた馬を神社に奉納していた。現在も、京都府の上賀茂神社などの神社には、神馬が祀られている。次第に生きた馬ではなく、馬の絵を描いた板を奉納するようになり、これが現在の絵馬へと変化していった。江戸時代には、庶民は神様に願いを届けるために、絵馬に願い事を書く習慣が広まっていたとされている。また、東日本を中心に、お盆に先祖の霊を迎えたり送ったりする乗り物として精霊馬を作る風習がある。現在では移動手段として人が馬を使うことはほとんどなくなってしまっているが、このように、馬が移動や通信手段として利用されていた名残である習慣が、身近に存在する。
参考資料
■「ファンタジーズキャラクター」岸本明子(インフォレスト)
■「馬文化ひだか:馬を学ぶ:馬の民俗学」北海道 日高振興局