エンゼルメイクという言葉を聞いた事がありますか?エンゼルメイクとは、いわゆる死化粧のことです。
亡くなった方に対してメイクなどを施し、死に顔をその人らしく整える死後の処置の1つです。
病院や施設の看取りケアにとって大切な技能の1つになっているようです。
看護師が行うのを「エンゼルメイク」と言います
亡くなり方は人それぞれであり、その死に顔もさまざまです。例えば闘病や事故などでできた傷があったり、苦悶の表情などを浮かべたままの場合もあります。
そのような死に顔を、メイクやさまざまな処置によって本来のその人らしい姿に整えるのがエンゼルメイクです。
実際のエンゼルメイクはどんなことをするのでしょうか。
一般的には、髪を整えたり、爪が伸びていたら切りそろえます。さらに男性の場合にはひげを剃ったり、女性は薄化粧を施します。ほおがこけていれば綿を入れたりするそうです。
では、なぜエンゼルメイクという言葉を見かけるのでしょうか。
そもそも日本は、昔から亡くなった人に対して「湯灌の儀」を行ってきました。故人の現世の汚れを荒い清め、生まれ変わりのための産湯の意味も込められた沐浴、もしくは清拭がされ、その後死化粧が施されてきたのです。これは、あの世へ旅立つ故人の身だしを整えるためであり、また葬儀において、皆に最期のその人らしい姿を見せるための心遣いからされてきたそうです。
一方、病院で看護師が中心となって行うのが死後の処置、いわゆるエンゼルケアと呼ばれ、その中の整容の過程がエンゼルメイクです。現代の日本では多くの人が病院で最期を迎えるため、その専門用語を見かけるようになったようです。
遺族がケアに参加することが、死の受容につながっていきます
一般的には病院で行われるのが「エンゼルケア・エンゼルメイク」であり、儀式として行うのが「湯灌・死化粧」といわれます。両者に厳密な違いはありません。しかし、いずれもその過程にできる限り遺族が参加することが遺族の心のケアにもなるといわれています。なぜなら、遺族が最期に自分の手でケアをできたという納得感を得られ、その中で少しずつ故人の死を受容できるからです。
「きれいな死に顔だった…」大切な人との最期の別れに、その人の穏やかな顔を見られ、悲しみの中にも安堵した経験があるのではないでしょうか。エンゼルメイク、もしくは死化粧は、亡くなった方をただきれいに見せるためのものではありません。故人の尊重や哀悼の念を表すことはもちろん、遺された人々への心のケアの観点からも大切なことであるといえます。