人気シリーズの完結作となる「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が公開されて、一か月が過ぎた。壮大なスケールで描かれる本作。タイトルにもなっている兵器「エヴァンゲリオン」はギリシャ語で福音を表す言葉である。また、ストーリーで重要なアイテムとなる「ロンギヌスの槍」や、敵となる「使徒」など、作中には聖書やキリスト教をモチーフとしたものが多く登場する。聖書やキリスト教は、その世界観の壮大さや神秘性から、多くの創作物に影響を与えてきた。今回は、聖書やキリスト教が描かれる漫画を紹介したい。
辺獄のシュヴェスタ
辺獄のシュヴェスタは16世紀の神聖ローマ帝国の女子修道院を舞台にした物語である。主人公の少女は、魔女狩りで育ての母親を亡くし、「魔女の子」の更生施設である修道院に収容される。多くの子たちが修道院に恭順していく中で、主人公は復讐を達成するために仲間たちと抵抗する。実際にヨーロッパを訪れ、専門家に時代考証を依頼した修道院生活が、緻密に描かれている。舞台となる時代のヨーロッパは、神やキリスト教が絶対的な時代から、宗教改革や印刷技術の普及によって、人々の生活に変化が生まれ始めていた。変革の時代の中で「己の心」を信じて闘う主人公たちの力強い姿に心を動かされる。
乙女戦争(ディーヴチー・ヴァールカ)
乙女戦争(ディーヴチー・ヴァールカ)は15世紀の中央ヨーロッパで起こった、キリスト教のカトリック派とフス派の戦いであるフス戦争を描いた作品である。カトリック派に家族を殺された主人公の少女は、フス派の仲間たちと共に、反カトリックの戦いへと身を投じていく。史実のフス戦争をもとにした、リアルな世界観が魅力的だ。キリスト教の中でも異端とされたフス派に焦点を当てた、珍しい作品である。女性や子供は、戦争下では弱者として扱われてしまう。そんな過酷な状況化で、武器を取って戦う少女たちの姿に心打たれる作品である。
D.Gray-man
D.Gray-manは二度のアニメ化も行われた、人気の少年漫画である。架空の19世紀末を舞台に、AKUMAをもって世界終焉への計画を進める千年伯爵と、AKUMAを破壊することのできる「イノセンス」を持つ「エクソシスト」の主人公たちの戦いを描いた作品である。実際の中世ヨーロッパが舞台となっている上記の二作品とは異なり、ファンタジー色の強い作品となっている。主人公たちの所属する「黒の教団」がヴァチカンの直属組織であったり、主人公たちと敵対するのが「ノアの一族」であったりと、キリスト教や聖書をモチーフにした設定が多く登場する。AKUMAは人間の魂から作られるという設定の本作。仲間と共にAKUMAとなった魂を救うために、主人公が厳しい戦いに身を投じ、成長していく姿が見どころだ。