物事について常に不平不満を言う人は一定数存在する。既に決定し、変更できなくても納得せず愚痴や文句を言い続ける人も同様に考えて良いだろう。相続においても同じで、遺産分割協議や遺言書の内容について、どうしても納得できず遺産分割協議が決定した後に裁判を起こそうとした例もある。遺言書においても内容を巡って有効か無効かの裁判があり、結局は裁判合戦になってしまったこともある。
相続で揉めた場合、相続税の申告期限があるため、時間が限られている
納得いかない内容ならば、納得がいくまで協議して決定すれば良いとも考えるが、相続の場合は相続税が絡んでくるため、そう上手くはいかなくなる。何故かと言えば相続税には十ヶ月という申告期限があるからだ。申告期限は厳守しなくてはならない。故に納得がいくまで協議するとは言っても限度がある。それでも遺産分割協議並びに遺言書の内容に、納得がいかない場合はどうすればいいのだろうか。
遺産分割協議は一旦成立すると全員の合意がなければ変更は原則不可能だが…
遺産分割協議は財産を有する人(被相続人)が亡くなった際、遺言書が残されていなかった場合に被相続人の財産を引き継ぐ人(相続人)全員の参加を以て誰が被相続人の財産を幾ら引き継ぐかを決定する重要な協議だ。
相続人全員の合意により遺産分割協議が成立した後だと、遺産分割協議の内容を変更することは事実上不可能に近いと言える。しかし、逆もまた真なりで、相続人全員の合意さえあれば再度遺産分割協議を開催し、内容を変更することは可能なのだ。
但し、遺産分割の内容について第三者の権利関係を侵害する可能性があれば変更は不可能となる。また、遺産分割協議の内容について錯誤があった場合、例えば新たに被相続人の財産が発見された、あるいは他に相続人が居たことが発覚した等ならば、遺産分割協議は法的に無効となり、再度協議を開催することで内容を変更できるのだ。
遺言書の内容も条件次第では変更可能
遺言書はどうかと言うと、条件次第では可能だ。遺言書について特定の相続人に不利な内容であった場合は、遺留分侵害額請求権を行使して遺留分を請求できる。また、第三者の利害関係を損ねる内容ならば、遺産分割協議を別途開催し相続人全員の合意があれば、遺言書の内容を変更できるのだ。被相続人が作成した遺言書は、法的に有効なものであっても決して絶対な存在ではないことに注意して欲しい。
相続人全員の合意を得ることは非常に困難で高コスト
遺産分割協議並びに遺言書の内容の変更について、ポイントになるのは内容の変更は可能だが、相続人全員の合意が必要となることだ。更に、多大な労力と莫大な時間が掛かる可能性があり、当然弁護士等の専門家に手続きを依頼することになるため、経費も大きな負担となるだろう。
やはり生前から協議しておくことが最強の対策
究極の対策は被相続人が存命している段階で後悔のないように納得がいくまで協議することを強く勧めることだろう。事前に協議しておけば、問題点も抽出でき相続人達の意思疎通も円滑に進められると考える。被相続人の遺志も相続人に伝わり易いのではないだろうか。事前に協議する場合には、税理士や弁護士等の専門家に相談すれば、円満解決に向けて最適の回答を与えて貰えるはずだ。