資本主義経済の我が国において、貧富の格差は必然的に生じるもの。そうした資本主義体制の不完全さを補うために、日本国憲法25条の最低生活保障の理念に基づいて運用されているのが生活保護制度だ。
今日では、ほんの一握りの不正受給問題等により、生活保護受給者に対するバッシング等が見受けられるものの、生活保護制度の必要性は否定できないし、これからもすべての人のもしものために必要な「セーフティネット」となる制度であり続けることは明らかである。
生活保護制度は8つの扶助で構成され、それぞれに基準額が設定されている
現在日本では、160万世帯以上、全世帯数の2%弱(生活保護制度の現状について 厚生労働省)が生活保護制度に基づく保護を受けている。そんな生活保護制度は国民の最低生活水準を保障するため、生活扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助など、それぞれの用途別に8つの扶助によって構成され、それぞれに基準額が設けられて支給されている。
8つの扶助の中で意外に知られていないのが葬祭扶助
この8つの扶助の中に、葬祭扶助というものがある。食費や生活消耗品費などに当たる生活扶助や、家賃に当たる住宅扶助、医療費(正確的には医療サービスそのものが支給物とされている)に当たる医療扶助などは、生活保護制度の中身として比較的認知度が高いものの、葬儀費用に当たる葬祭扶助が支給されているということはなかなかご存知ではない方も多いのではないだろうか。
葬祭扶助の支給額とは
葬祭扶助も、他の扶助と同様に、憲法25条の最低生活保障の理念に基づいて支給されるものである。支給額については、大人20万6,000円以内、こども12万4,800円以内とされているが、最低生活保障の理念に照らし合わせて、一般的な水準を大きく超えない限りは支給上限額に関わらず扶助の対象とするべきであるという見解も厚生労働省から示されている。
葬祭扶助の葬儀の範囲と支給対象とは
この葬祭扶助の対象となる葬儀の範囲としては、検案、遺体の運搬、火葬または埋葬、納骨など葬祭に必要なものが含まれる。そしてこの葬祭扶助は、故人が生活困窮者であってかつ、遺族も生活に困窮していて葬儀費用を工面できない場合や遺族(扶養義務家族)がおらず、それ以外の第三者、例えば個人が生前暮らしていた賃貸住宅の大家さんや入所していた施設等が葬儀を執り行う際に、故人の遺留金品では葬儀費用を賄えない場合に支給される。
なお、受給するには、故人が住んでいた地域の福祉事務所に申請して支給決定を受けたうえで、通常通り民間の葬儀社に葬儀を依頼することとなる。
どんな人にも尊厳ある旅立ちが保障されている
通夜や告別式、祭壇などはなく、簡素な直葬になってしまうとはいえど、どんなに困窮しても尊厳ある旅立ちが出来る仕組みがあるということは、ぜひ頭の片隅に入れておいていただければと思う。