新年早々友人が主催する新年会に参加すると、談笑中に相続の相談となった。ここのところ毎年年初は友人達との相続相談会になっていると揶揄されたが、あたらずとも遠からずといった状況だった。
事実婚の相続はデメリットばかり?
肝心の相談内容は入籍していないが事実上夫婦関係にあるカップル、所謂事実婚のカップルについて、どちらかが先に亡くなった場合、相続はどうなるのかということだった。結論は、デメリットばかりでメリットが殆ど無いというものだ。夫婦の有り方について多様化しているが、事実婚自体はメリットが多いとも言われている。しかし、相続に関して事実婚はデメリットばかりとなっているのが現状だ。
そもそも事実婚とは?
事実婚とは婚姻届けを役所に提出せず、事実上夫婦として生活している男女カップルであるとされる。当然戸籍上は夫婦として記載されてはいないため、法的には夫婦として成立していない。これに対して、正式に婚姻届けを役所に提出して、戸籍上も夫婦として記載されている夫婦を法律婚と言う。
事実婚のデメリットは、残された配偶者に相続権がないこと
事実婚において、相続に関する最大のデメリットはどちらが先に亡くなったとしても、残された配偶者には相続権は一切無いことなのだ。何故かと言えば、相続税法並びに民法における相続関係の法令では、法律婚にある配偶者のみ相続権が認められており、他は一切認められていないからだ。となると、相続並びに相続税関係の法令上の特例等の適用を受けることができないため、財産の相続ができないか若しくは相続したとしても高額な相続税を納付することになってしまうのだ。
基礎控除や配偶者控除、小規模宅地の特例なども受けられない
具体的に解説すると、相続権がないため法的には他人となってしまう。故に配偶者ではなく子供(事実婚夫婦に子供が居た場合)に全ての財産が相続されることになる。その際に法定相続人ではないために、基礎控除額算定時に除外されてしまう。あるいは、子供が居なかった場合は、亡くなった人の両親か兄弟姉妹が相続人となるため、事実婚の配偶者は相続そのものを受けることができなくなる。また、配偶者ではないため配偶者控除を受けることができない。小規模宅地等の特例を受けることができない。更に、相続人ではないため相続税二割加算の対象となる。他にもデメリットがあるが代表的な例を挙げてみた。
遺族年金が支給される可能性はある
数少ないメリットとしては、事実上の夫婦であり生計維持関係にあったことが認められた場合にのみ、遺族年金が支給される可能性があることだ。しかし、法的には他人であるため、市町村によっては認められない場合もあることに注意が必要だ。
事実婚の配偶者に相続させる方法
事実婚の配偶者に財産を相続させる方法としては、家庭裁判所に特別縁故者の申し立てをし、それが認められれば相続権が与えられる。これが最も安全だと考えるが、手続きが複雑になるため注意して欲しい。他には遺言書を作成するか、生前贈与、死因贈与と言った方法があるが、前述のように基礎控除額が使えず、また相続税の二割加算の対象となるために慎重に判断しなくてはならない。
事実婚は法的な裏付けが無いため立場上非常に弱い。もし、相続並びに相続税で困っている場合は、速やかに税理士や弁護士等の専門家に相談することを勧める。