相続税の節税対策として最も効果が高いもの、それは生前贈与だ。財産を有する人が亡くなる前に、相続人に対して所有する財産を無償で譲渡することだ。何故効果が高いかと言うと、相続税とは財産を有する人が亡くなり、当該財産が相続人に引き継がれた段階で、引き継がれた財産に課税されるため、亡くなった時点で所有していた財産が少なくなれば、必然的に相続税が低額になるからなのだ。当然、贈与するのだから贈与税が課税されるが、相続税とのバランスを考える必要があることを踏まえても、生前贈与が効果的な対策であることに変わりはない。
生前贈与をするなら遺言書も必ず作るべき
生前贈与だが、贈与税の非課税額(相続税法第1条4項他)即ち年間の贈与額が相続人一人あたり110万円以下であれば贈与税は課税されない。他にも様々な優遇規定があるので、状況に応じて利用してみるのもいいだろう。さて、生前贈与をする際に忘れてはならないことがある。それは、必ず遺言書を作成しておくことだ。この場合の遺言書は公正証書遺言が最適だと考える。公正証書遺言は法的効力が強く、信頼性も高いからだ。手数料は発生するが、安全性を考えれば最善な遺言書と断言しても良い。
生前贈与をして、遺言書を作らなかったらどうなるか
生前贈与をした後に亡くなった場合に、遺言書を作成しなかったらどうなるか。それは、遺産分割協議を開催して相続人の誰がどの財産を幾ら引き継ぐかを決定しなくてはならなくなる。更に、生前贈与を受けた相続人と受けなかった相続人との間でトラブルが発生することが多いのだ。
生前贈与をして、遺言書を作らなかったときに最も多いトラブル
最も多いトラブルが生前贈与を受けなかった相続人が、生前贈与分を相続財産に加算(持ち戻し)し、遺産分割協議にて再度分割することを求めてくることだ。これを特別受益の持ち戻し(民法第903条1項他)と言う。特別受益とは、一部の相続人が受けた生前贈与や遺贈等の利益のことだ。
特別受益の持ち戻しを請求された場合、生前贈与そのものが無効となり折角の相続税対策も無効となってしまう。このような事態を防ぐためにも遺言書を作成し、特別受益の持ち戻し免除即ち生前贈与分を相続財産に加算しない旨の文言を記載しておけば良い。
生前贈与をして遺言書をつくっても避けられないトラブルはある
しかし、遺言書を作成しておけば全て解決かと言うと、必ずしもそうではない。遺留分と言って、相続人について最低限財産を相続できる権利があるからだ。2019年7月以降遺留分侵害額請求に改正されたが、遺留分は剥奪することができないため、生前贈与を実施する場合には充分に注意して欲しい。
それでも生前贈与は相続税の節税対策として非常に有効
生前贈与の注意点について簡単に解説してみたが、相続税対策としては充分に効果的であるため、活用して欲しいと考える。前述のように贈与税とのバランスや、誰にどの財産を贈与するか等、難しい問題も多いため一人で悩まず、税理士や弁護士等の専門家に相談しておくことを勧める。