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遺骨に対する思いが日本とその他の国々でどのように異なるか

火葬が義務づけられている日本において、故人の最後の姿は骨ということになるだろう。「骨まで愛して」「骨までしゃぶられる」などと言う表現も、人間の身体を削り取れば残るのは骨ということである。日本人が特に遺骨にこだわりがあることはよく知られている。では他の国では遺骨は軽視されているかというと必ずしもそうではない。人の「骨」への思いとは。

遺骨に対する思いが日本とその他の国々でどのように異なるか

インドやキリスト教圏との比較

火葬の本家ともいえるインドでは火葬された遺骨はガンジス川に流され「輪廻」の輪に戻っていく。キリスト教圏では近年では火葬も多くなってきたが「最後の審判」の日の「肉の復活」に備えての土葬が基本だ。これに対し日本では大多数は墓地に納骨され、命日や盆・彼岸には墓参りが行われる。つまり遺骨に会いに行くのである。魂はあの世にいても遺骨は残っている。遺骨はその人そのものである。

遺骨の初めての出会いは火葬場

遺骨とは火葬場で初めて会うことになる。火葬が完了したあとの光景は何度見ても衝撃を受ける。まだ眠っているようだった故人の変わり果てた姿にリアリティは感じられない。遺族による骨上げが終わると、職員が遺骨の主な部分を説明して骨壺に納める。その際一番上に置かれるのが喉仏である。この喉仏は我々がよく言う喉の突起部ではなく、その奥の部位で仏さまに似ていることから付けられた。骨に仏の姿を見る感性は日本人の遺骨崇敬の深さがわかる。仏式の場合四十九日の間、我々は遺骨に寄り添い、次第に故人が骨となった現実を受け入れる。ゆっくりとお別れまでの時間を過ごし、遺骨は墓に納められ、一連の葬儀は一応の終了となる。葬儀とはまさに骨に始まって骨に終わるのである。

震災で行方不明の女性 8年7か月余り経て遺骨が遺族の元に

第二次世界大戦における戦没者の遺骨は未だ収集されきっておらず、現在でも厚生労働省の主導による事業として進められている。また震災や豪雨などの災害による犠牲者の捜索も続けられており、最近でも次のような報道が伝えられた。

震災で行方不明の女性 8年7か月余り経て遺骨が遺族の元に

東日本大震災の津波に巻き込まれて行方が分からなくなり、ことし8月に宮城県山元町の沖合で見つかった当時27歳の女性の遺骨が8年7か月余りを経て、24日、遺族の元に戻った。捜索を続けてきた警察を代表し、亘理警察署署長から両親に遺骨が手渡された。

父親は「生身の娘が帰ってきたようで本当にうれしくて離したくないです。家族が諦めてしまったらおしまいなので、ほかの行方不明者のご家族も諦めないでほしいです」と話す。
また母親は、遺骨が入った箱を大事そうに触れ、「やっと戻ってきてくれてお帰りと言いたいです。ずっと寒い所にいたので、しばらくは納骨せずにそばに置き、夢でもよいから娘と話したいです」と涙ながらに話していた。(NHKニュース2019年10月24日配信より抜粋)

遺骨への思い

戦争や災害で命を落とした方の遺族は遺骨が変えるると「お帰りなさい」「やっと帰ってきた」と安堵する。やはり「千の風」的な汎神論的ロマンチシズムでは、ほとんどの人は納得できないのだろう。お墓に行っても私はいないと言われても、遺骨が帰ってくれば「お帰りなさい」と言いたくなるし、そこに遺骨が眠っていれば、やはりそこにその人はいるのである。

「骨」への思いは日本だけではない

最後の姿である骨は死の隠喩でもある。死神といえば鎌を持つ骸骨の姿が定番であるし、漫画などに登場する毒薬の瓶にはドクロマークが貼られているのもおなじみだ。一方で骨は骨髄を生成し人体を構成する根元でもある。古来より力の源、生命の源でもある骨には神秘的な力が宿っていると考えられた。それが聖人の遺骨ともなれば、その尊厳は聖性を帯びるまでになる。

仏教の仏塔には仏陀の遺骨とされる仏舎利が納められ崇敬の対象になった。日本では仏教は仏像と共に伝来したため、信仰の対象にはなりにくかったが、インドでは一切の事象を「空」とし哲学的要素の強い初期仏教では具体的な崇拝対象がなく、仏舎利が仏陀そのものであった。

キリスト教圏でも聖人の遺骨や骨片などが安置されている教会や美術館は多い。ケルンの聖ウルズラ教会には無数の頭蓋骨が安置されており、美術史家・秋山聰によると「大量の人骨から醸し出された特有の臭気」が立ち込めているという。こうした「聖遺物」には霊験あらたかな逸話が事欠かず巡礼者は絶えない。「骨」への思いは日本だけではない。

メキシコでの盛大なお祭り 「死者の日」

南米、特にメキシコでは「死者の日」という祝日がありお祭りが盛大に行われる。死者の日はカトリックにおける「諸聖人の日」と同じ11月1、2日で、カトリックの祝祭とメキシコの土着信仰や葬送儀礼が融合したものだろう。日本ではお盆に相当するものだが、死者の日は明るい雰囲気で死者と楽しく過ごす祭りであり、死の隠喩であるドクロのケーキや装飾などに溢れドクロ祭りの様相を呈している。

オアハカ州の人気の民芸品にガイコツカップル(結婚式)のブリキ細工がある。ガイコツのカップルは、「この世の命が終わっても一緒」という意味合いもあり縁起の良い代物だ。キリスト教式の結婚式の宣誓文には「死が二人を分かつまで」という聖書の一言がひかれる。死をもって夫婦の契約終了を意味するのだが、メキシコの土着信仰では死は永遠を意味し骨はその象徴であった。

最後に

筋肉は衰えても骨は残る。寝たきりになっても人は骨で生きている。骨は生の証でありそれ遺骨になっても変わらない。散骨が市民権を持ちつつある昨今ではあるが、日本人の、というよりそもそも人間の骨への思いは拭い難いものがあるのではないだろうか。

参考資料

■秋山聰「聖遺物崇敬の心性史」(2018)講談社

ライター

渡邉 昇

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