最も重要な相続税対策とは何か。それは不動産を利用した相続税対策と言える。なぜなら日本人が所有する財産の内、不動産が占める割合が高いからだ。国税庁の発表によると、2007年における相続税の申告状況では、相続された財産の内、不動産が占める割合は50%以上であった。ここ数年の傾向だと不動産よりも現金や有価証券の割合が増加しているとのことだが、不動産が多いということには変わりはないのかもしれない。そうなると、未だに日本人が所有する財産は不動産が多い。ということは相続税対策を考える場合、不動産対策として捉えた方が重要となるのは必定なのだ。
不動産は分割することができないからトラブルになりがち
不動産を利用した相続税対策が重要な理由は他にもある。それは、相続のトラブルでは不動産が関係するものが多いことなのだ。不動産は現金預金と違い均等に分割することが困難であるため、公平性を保てない側面がある。相続人の誰かに偏りがちになり、その結果利益調整に手間取り大きなトラブルの原因となってしまうのだ。
不動産を利用した相続税対策は3つ
不動産を利用した相続税対策は大きく分けて三つある。先ず一つ目は、所有している不動産についてこれから相続税対策を考える場合。二つ目は、不動産を新規に取得して相続税対策とする場合。三つ目は、相続発生後(不動産の所有者が亡くなった後)に相続税対策を考える場合だ。
残念ながら三つ目の対策は、効果的な節税対策とはなり得ない。というのも相続税対策は、生前対策と言い換えても良い位に亡くなる前に対策を練り、手続きを済ませておくことが最も重要になるからだ。これを踏まえて一つ目と二つ目の対策について簡単に解説してみる。
不動産を利用した相続税対策の1つ目は「小規模宅地の特例」
一つ目は、何と言っても小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条4項他)だ。法令に規定する一定の要件を満たす場合、相続税が課税される評価額を最大で80%減額できる制度だ。節税効果が大きいためお勧めの対策となる。
最近注目を集めている賃貸アパート経営は、当該制度の適用を受けるためのものだ。所有している土地に賃貸アパートを建築し、賃貸すれば土地と建物について、当該制度の適用を受けることで大きな節税効果が得られるためだ。しかし、節税効果が大きい故に制限が厳しいため、制度の適用を受ける場合には慎重に判断して欲しい。他には生前贈与と言って、生存中に相続人達に不動産を贈与することだ。近年の税制改正では、生前贈与をした場合の方が有利な条件が多くなってきているので、考慮に値するものと考える。
不動産を利用した相続税対策の2つ目は「タワーマンションの購入」
二つ目は、現金預金や有価証券を所有しているよりも、タワーマンションを購入した方が相続税対策上有利となっている。仮に現金一億円を所有していたとする。所有者がそのまま亡くなると相続が発生するが、一億円の現金に相続税が課税されることになる。しかし、一億円のタワーマンションを購入したとすると、状況にもよるが評価額が八千万円まで下がりその八千万円に相続税が課税されることになるのだ。更に、相続終了後にタワーマンションを売却しても、時価が相続税評価額より高額な場合が多いため得なのだ。法令の改正により、タワーマンション購入が有利な状況が続くか否か分からないが、一考に値するものと考える。但し、これにも落とし穴がある。購入後並びに相続後にも継続して居住しなくては、相続税の課税回避行為(所謂脱税)と見做される可能性がある。事実名古屋地裁での判決で否認され、多額の相続税を納付させられた例もあるので、注意が必要だ
相続の専門家にまずは相談!
最後になるが、不動産を所有している人が亡くなった場合、相続税が高額になる場合が多く、地主やその家族達は頭を痛めているかもしれない。しかし、一人で悩まずに税理士や弁護士等の専門家に相談すれば、相談者にとって最適な解決策を提示して貰えるはずだ