イエスが処刑される前日に、弟子とともに晩餐をした様子が描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチによる「最後の晩餐」。イエスはパンとぶどう酒は自分の肉体と血液と例え、弟子たちに与えたと言われている。また、近年魚料理と言われていたものは、うなぎのオレンジスライス添えという事が判明したとか。その絵画にちなんでか「死ぬ前に食べたいもの」は度々話題になる。また平均寿命から、残りの食事回数を割り出して、食事を疎かに出来ない、美味しいものを食べたいという話も聞く。
いつまで美味しい食事ができるのか?
実際に、歳を重ねても、好きな物を食べ続ける事が出来るのか。一般的には、人間は加齢とともにまずは歯に支障が出てくる。
8020運動という言葉を聞いた事はないだろうか。厚生省(1989年当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動である。20本以上の歯があれば、食生活をほぼ満足にする事ができると言われている所以から、子ども成人、男女問わず、歯を大事にしていこうと推進している。
永久歯が残っている事で、高齢になっても食事を楽しむ事が出来るようだ。実際、入れ歯と永久歯で食べるのとでは、食べ物の咀嚼能力は大きく違う事は多くの人がご存知だろうが、具体的に繊維食品を嚙み切れる能力も低下し半数以下の摂取量にまで落ち込んでしまうとか。
誤嚥性肺炎を引き起こしかねない!?
咀嚼だけでなく、舌の機能の低下、唾液の分泌量の低下などが絡み、飲み込む力が衰えてくる。また誤嚥といって、気道に食べ物が流入し、肺炎を引き起こす事もある。(誤嚥性肺炎)
肺炎の死亡原因は高齢になる程高くなっていくなどなど、食べる事で生死を脅かされる事になる事も。
よく、食べ物が喉に詰まってむせるという経験が誰しもあるだろうが、咳をして吐き出す物が高齢の場合は体力がなく出す事が難しくなり、重大な病気に繋がりかねない。
死が近づくと食欲はどうなるのか
祖母が亡くなる直前に、介護をしていた母に「カステラが食べたい」と言った。その時の祖母はほとんど点滴での栄養補給であった。母は誤嚥性肺炎を危惧して祖母の要望に応えられなかった。そのまま祖母はカステラを口にする事なく眠るように旅立った。祖父の場合は草餅であった。寝たきりで固形物を食べるのが難しい状況の中で、大好きな草餅を口にした事は家族を驚かせた。
死期が迫り嚥下機能が落ちても本人が食べたいと言ったものを口にする場合には、その食事をする事は意味があると看取った母は悔やんだ。旅たちの前は食べ物の味を感じる事で、自分の人生を走馬灯のように思い起こしていたのかもしれない。