相続税対策として、土地やマンション等の不動産を購入されるか、既に所有している土地に賃貸アパートを建築している人がいる。これは、相続税法上現金を所有しているよりも、同じ金額で不動産を購入した方が相続税の軽減措置を有効利用できるためである。また、購入したもしくは所有している土地の上にアパートや戸建てを建築し賃貸した場合には、条件はあるが更なる軽減措置を有効利用できる。そして実は、この先にもう一つ有効な対策がある。それは、最近注目を集めている所有している賃貸不動産の法人化だ。
個人よりも法人のほうが税率が低い!
最初はメリットだ。賃貸不動産つまりアパートやマンション、戸建てを賃貸して家賃収入を得ている場合、収入から経費を差し引き、残額は利益即ち所得となるために所得税が課税される。所得税の税率は所得によって変化するが、5%~45%となっている。法人化した場合だと、法人税が課税されることになる。法人税の合計税率(法人税・法人地方税・事業税の合計)は平成30年4月1日以降で、資本金1億円以下の中小法人だと36.81%となり、一般的には所得税よりも法人税の方が低い(税額が安くなる)。所得金額が1000万円を超える高額所得者ならば、法人化した方が税額は低く抑えることができる。
また、家賃収入を役員報酬や給与という形で早期に分配できるため、相続財産の増加を抑える効果もある。更に、条件にもよるが事業承継税制(租税特別措置法第70条7項他)を利用することもできるため、大きな節税効果が期待できる。
法人化すると気軽に現金の出し入れができない
次にデメリットだ。法人の現金や法人名義になった預金口座は、当該法人経営者や従業員であっても勝手に使えない。経営者や従業員である個人が使える現金は、役員報酬や給与として支給された分のみであり、法人の現金や預金は法人の経営、即ち不動産の維持管理や他の経費の支払いにのみ使われる。
もし、勝手に使った場合は業務上横領罪に問われることになるので、注意が必要となる。また、法人においては帳簿管理や会計事務手続きが複雑かつ、多岐に渡る為に負担が増加する。更に、法人が赤字になったとしても、法人地方税が課税される。他にもあるが、詳細は省略する。
基準は所得の額
賃貸不動産の法人化については、メリットデメリットがある。家賃収入の額に応じて慎重に判断しなくてはならない。家賃収入や経費、所得を確りと分析してキャッシュフローを検討していけば、最適な対策が理解できるはずだ。しかし、個人で実行するには限界がある。その場合には、税理士や弁護士等の専門家に相談すれば、明確な回答だけではなく、相談者に応じた対策も同時に得られるはずである。