現在、葬儀の形は多様化しています。
故人を偲ぶという思いは、今も昔も変わらず葬儀の中心にある事柄ではありますが、見送り方は様々なものが行われているようです。
故人が好きだった曲を生演奏して送る「音楽葬」や、プロジェクターで生前の写真の投影を行う「メモリアルDVD」など、葬儀の際の演出には決まりがありません。
「演出」と言うと作為的な意味を感じ、少々語弊があるかもしれませんが、故人への思いを形にする「見送り方」について考えてみましょう。
音楽を愛した故人を送る「音楽葬」
故人が好きだった曲を流して送る「音楽葬」があります。
一口に音楽葬と言っても形は様々で、プロの演奏家に生演奏をしてもらうものから、故人に縁のある曲を選曲しBGMにこだわったりと多様です。
中には、故人がバンドを組んでいた頃の仲間が集まって当時を思い起こしながら演奏をしたり、コーラスをやっていた方が亡くなられた際には、ご友人の方々が心を込めて歌の贈り物をしたといったものもあるようです。
故人を表す「展示物」
故人が大切にしていたもの、生前に愛用していたものを展示して送るという形もあります。
絵が趣味だった方であれば作品を飾って参列者に見てもらったり、故人が生涯に渡り行ってきた仕事、また仕事道具などがあれば、それを展示して偲ぶのもすてきです。
また、故人が好きだった花で祭壇を飾るというのもあります。
大好きだった花いっぱいに囲まれた姿で送りたい――そんなご家族の思いもあるようです。
思い出の写真で送る儀
わたしの先輩から伺った、お父様が亡くなられたときの話です。
まだまだお若く、お元気で仕事をされていたお父様を突然の事故で亡くされた際、先輩とそのご兄弟の、生前の父の姿をたくさん見てもらいたいという思いから、一枚一枚、心を込めてパネルを制作し、お写真を展示されたそうです。
ご家族で印刷に関わる会社を起こされていたため、ご自身方で作られたそうですが、お父様への思いが伝わる葬儀の形だなと感じました。
また、冒頭で上げたプロジェクターで生前の写真の投影を行う「メモリアルDVD」といったものもあります。
故人の様々な場面での思い出を音楽とともに送り、偲ぶ。
写真というのは、その人の軌跡を辿るのに最適だと言えるでしょう。
大切なのは故人への思い
故人を思い、見送るやり方は多岐に渡ります。
人生の最後を飾る葬儀ですから、心を込めて温かく送りたいというのが家族の一番の思いです。
希望する形があれば、葬儀社へどんどん相談してみるのがいいでしょう。
そして、生前のうちに家族と話しておくのも終活の一つです。
自身の願いを伝えたり、家族もその方の意志を確認しておくのも大切だと言えます。
しかし、参列者に見てもらうことや、見える・耳に届くという形にこだわらなくとも構いません。
出棺の際に思いを込めた手紙を入れたり、故人が好きだった品をお棺に入れて送ったり――。
大切なのは演出の方法ではなく、故人への思い。
ただこの一言に尽きるのではないでしょうか。