日本はほぼ火葬が行われる国の一つ(湿度が高く、腐りやすいためだろうか)だけれど、世界には様々な種類に富んだ葬儀が存在する。そのいくつかを紹介する。
鳥に遺体を処理してもらう鳥葬
一番有名な変わった遺体処理といえば、おそらく鳥葬だろう。チベット仏教、ゾロアスター教で行われる。チベット仏教では、死後残った遺体は中に入っていた魂が解放された肉の抜け殻であり、魂は先に天に昇っているとされる。そこで、地上に残った肉の抜け殻を天へ送り届けるために、食べやすいサイズに解体した遺体をハゲワシ等の猛禽類に食べさせる。翼のある生き物と天を関連づけるのもどこか納得できる。逆に、ゾロアスター教では遺体は穢れの源であり、悪魔の住処であるとされているところが大変興味深い。ゾロアスター教では火は神聖視されており、遺体処理のためには使えない(同じ理由で土葬も水葬もない)。そこで、ダフマと呼ばれる鳥葬用の施設に遺体を置き、鳥に食わせるのである。他に獣葬といいうのもある。マサイ族の葬儀方法で、遺体をサバンナのど真ん中に遺棄し、ハイエナやライオンなどに食わせるのである。これは自然の一部である自分たちを動物に食べてもらうことでその自然に返すという考えに基づく。また、食葬というのも存在することには存在する。アボリジニに存在する文化であり、その遺体を食べることで死者を自分の一部にしてしまうためである。食葬はいわずもがな、鳥葬・獣葬は死体遺棄となる可能性が大いにあり、日本では行えない。
明るく楽しいお祭り騒ぎの葬儀
日本の葬式は厳かに行われる。故人との思いでを振り返っている最中、楽しかったことを思い出し笑いなぞしようものなら、白い目で見られてしまう。アメリカのルイジアナ州ニューオーリンズではジャズ葬というものがある。日本では火葬という工程があるが、アメリカでは土葬が主であり、エンバーミング処理された遺体を墓地まで運ぶ。その際ジャズ葬ではブラスバンドが底抜けに明るいジャズを演奏し、参列者も一緒に騒ぎまわるのである。パレード葬といってもいいかもしれない。不謹慎と言われそうだが、これは死者が天国へ行くのを祝福しているのである。なぜジャズなのかというと、これには悲しい理由が存在する。ジャズは黒人から生まれた音楽であり、黒人は差別の対象であった。その黒人にとって、死とは苦しみからの解放であり、喜ばしいものだったから、盛大に祝福するという流れになったわけなのである。
宇宙に漂う死後
そして、最もかわっているというか、スペシャルな葬儀方法として、宇宙葬がある。宇宙葬を執り行う葬儀社は、故人の遺灰を専用のカプセルに入れ、ロケットで宇宙に打ち上げ、散布する。散布されたカプセルは数か月から数年宇宙を漂うことになる。この間、スマートフォンで今カプセルがどこらへんにあるか確かめることもできる。一定の期間宇宙を漂うと大気圏に突入し、燃え尽き、流れ星となるのである。なんともロマンティックである。文字通りお星さまになってしまうわけだ。
国や地域、宗教や文化によって異なる葬儀
このように、葬儀にも様々な形があり、決してどれも故人をバカにするようなものではない。平均寿命が延び、自分の死について考える時間は昔よりもずっとある。死後、自分が灰になるか、骨も残らず食われるか、流れ星になるか、少し考えてみてもいいかもしれない。