昨今、「少子高齢化」や「2025年問題」などと日本全体の高齢化といかに対峙し、この時代を乗り越えていくのかが問われてきている。では、高齢者が増えることで葬儀が営まれる数が実際に増えているのだろうか。また、今後の死亡者数の増大がどこまで見込まれているのか。そして、そのようなことから見えてくる問題点。例えば、斎場や火葬場は、今の数で足りるのかという疑問に対して調べてみたいと思う。
死亡者数の変遷と予測
厚生労働省の「平成29年(2017)人口動態統計の年間推計」によると、昭和30年代から年間の死亡者数は、60万人から70万人台で推移してきた。しかし、平成2年に初めて80万人台を突破。その後、平成7年には、90万人台を突破。平成15年には、100万人台を超えてきた。そして、平成29年には、134万人の方が1年間にお亡くなりになっている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2030年には、年間の死亡者数が160万人にのぼるだろうとされ、2039年、2040年の両年には166万9000人でピークを迎え、その後もしばらくは160万人台で推移するだろうとされている。
死者数が増えればその分火葬場も増やすべきだという意見もあるにはあるが…
昭和の時代に比べ、死亡者数が2倍以上に膨らんだ。そして、今後それ以上になるという見込みが示されている中で喫緊の課題は、斎場や火葬場の不足の問題である。現在、すでに東京圏といわれる神奈川、埼玉、千葉の1都3県では、場所や時間帯によっては1週間から10日ほど待たされるケースも出てきているという。これも少子高齢化や人口減少社会の中で、首都圏への人口の一極集中が原因となっている。
一筋縄ではいかない火葬場不足問題
斎場や火葬場の問題は、やはり深刻である。東京圏で新設の斎場や火葬場を作ろうと思えば土地の取得や地域住民の理解を得なければならない。そして、新設の施設を作っても死亡者数がピークを過ぎ減っていけば自治体としても作った施設が不要なものになってしまうことになる。このような問題に対しての打開策として石川県小松市では「お葬式はふるさとで」というキャッチフレーズで呼びかけているという。そして実際に、神奈川県の男性を霊柩車で搬送したという事例も出てきているという。このように、「出身地」など故人に何らかの関わりのある土地で既存の施設を使ってこの問題をクリアしていければ理想的である。
問題解決は大事だが
少子高齢化や人口減少による問題は、人生最後の締めくくりの場さえ窮屈なものにしている。また、首都圏への人口一極集中による施設不足をどう補っていくのか。考えるに、この問題に対して特効薬や妙薬などはないと思っている。行政も斎場を営む民間事業者も知恵を出し合い有効な手立てを講じていかなければ、もうすでに大変な状況に差し掛かっている。そして、何よりもこの問題に携わる人に言いたいのは、人の死というものに対しての尊厳を大事にしていただきたい。