昨今「エンディングノート」というものに対する社会の関心が高まっていまる。エンディングノートというのは、自分の生涯の記録や死後に残された人たちに伝えておきたいことを書き記した文書である。
2011年にドキュメンタリー映画「エンディングノート」が公開されたことで、一挙に知名度が上がったが、エンディングノートを書いている人の実数は1割にも満たないという。
エンディングノートには何を書くべきか
有名になって需要が増えたことで、今では50種類を越すエンディングノートが様々な形式で販売・配布されるようになっている。体裁や価格帯も様々だが、書き込む内容についてはどこが出しているものでもほぼ同じような構成になっており、以下の通りだ。
・自分のプロフィールや自分史
・親族関係や家系に関する情報
・介護が必要になったときや延命措置に対する要望
・資産・貴重品に関する取り扱いかた
・葬儀・埋葬の希望について
・相続(財産や土地など)の概要
・コンピュータやネット上に残された情報の後始末のしかた
遺言書とエンディングノートの違いは法的効力の有無だけではない
一見すると遺言書と似ているが、遺言とは異なり法的効力を有するものではない。あくまで死後の家族の負担を減らすことを目的にしている。
遺言書とは違ってエンディングノートはよりフランクで、家族に対する自分の愛情をありのままに伝えることが可能だ。生前には白々しかったり照れくさくて口にできなかったりすることを書き留めておくことで、大切な人を亡くした家族の哀しみを癒す力添えになる効果もあると言われている。
買っても書かないエンディングノート
マスメディアのある調査によると、現在60歳以上で、エンディングノートの存在を知っている人は7割弱だという。そして実際に書いてみたいと思っているの人は5割ほどだそうだ。
ところが実際にエンディングノートを書いている人の実数は1割にも満たないという。エンディングノートの存在を知っていて書いてみたい気持ちもあるのに、いざ書いてみようとすると「書き始める」ことが億劫でなかなか書く気になれないひとが大勢いるというのが現状のようだ。
エンディングノートを中々書き始めることができない意外な理由とは
現実問題として、エンディングノートを書き始めることを難しくしているのは、意外な部分にあると思われている。
エンディングノートの社会的認知度が高まって商品が多数出回るようになってから、各メーカーは価格を吊り上げるために、装丁を豪華にしてみたり、印刷レイアウトに凝ってみたり、書きかたの解説書をつけてみたりと付加価値を与えて差別化を図りはじめた。
その結果、書き始めるのに思わず肩肘を張ってしまう、自分の人生の集大成だと勢い込んで、それなりの心構えを必要とするような気分にさせられてしまうエンディングノートが市場商品の大半を占めているのだ。
気軽に書くことが大事
しかしながら、エンディングノートというのは、あくまで覚え書きやメモの一種だと考えるのが妥当だろう。正式な遺言のように形式張ったものではなく、日常の忘備録の延長だと考えても間違いではない。また机に向かって正座して一言一句に注意を払って書き込んでいくような堅苦しいものでもない。
この問題への対策はじつは簡単だ。あなたがエンディングノートを書いてみようと思ったら、なるべく安価で取り替えやすい簡便なものを選ぶことをおすすめする。初めてエンディングノートを書いてみようと思うかたは、これを心がけるといいだろう。
いつでも気軽に書き込んで、思いついたことがあったら書き加えたり訂正したり、新しいノートに買い替えたり、そうすることで初めて、あなたのエンディングノートはあなたの家族への愛情を素直に伝えられる道具になっていくことだろう。