人によっては耳の痛い話になるかもしれないが、親の脛を齧ってばかりいると、相続の際に思わぬしっぺ返しを食らうことになるかもしれない。今回はそんな話を綴ってみたい。
筆者の知人の話しである。知人には兄弟が多かったが、知人の両親はとりわけ知人を可愛がっていて、お小遣いだけではなく車やバイク、更にはマンション購入の資金まで与えていたのだった。そして時が過ぎ、相続について考えなければならなくなった矢先、問題が起こった。それは、相続において最も揉める問題、即ち遺産分割協議である。
兄弟の中で唯一1人だけ、生前から色々と買い与えられていた
知人の両親は、相続財産の殆どを知人に相続させたいと言っていた。筆者は遺留分について説明したが、遺留分は無視して欲しい旨、筆者に伝えてきた。それを聞いていた他の兄弟達が一斉に猛反発し、掴み合いの喧嘩にまで発展してしまった。当然、初回の協議は物別れとなった。何故知人の両親は、知人にそこまで入れ込むのか理解に苦しんだが、知人も両親の溺愛に甘んじ、何も手を打とうとはしなかった。
他の兄弟、特に長男(知人は長男ではない)が直接筆者に相談を申し入れてきた。長男曰く「あいつ(知人)はマンションの購入費用だけではなく、車やバイク等何でも与えて貰っていた。他の兄弟達は、殆ど何も貰っていない。それにも関わらず相続分も殆どあいつにだけ。しかも、説明して貰った遺留分や、法定相続分も含めて他の兄弟達には多くても等分だなんて、到底納得できるわけがない」とのことだったが、筆者としても他の兄弟達の言い分は理解できた。
他の兄弟から不満が出たため特別受益分を持ち戻して再計算
このようなトラブルは沢山あるが、解決できる方法がある。それは、特別受益だ。前述の例だと、マンションの購入費用や、車やバイクの代金が該当する。この場合だと贈与と見做すことができるため、遺産分割の際に特別受益分を考慮しないと、非常に不公平な結果となる。故に、遺産総額を計算する際に特別受益分を持ち戻し、再度計算し直してから遺産総額を決定し、遺産分割を行う際に特別受益を受けた分を差し引くこととなるのだ。
前述の知人の場合だと、結果的に遺留分を争う裁判となり、両親と知人の意思は反映されずに特別受益分を持ち戻して計算し直した。そして、裁判所の判決どおりに法定相続分にて相続の手続きが行われたのだ。知人はあまり納得がいっていないようだったが、裁判所の判決なので渋々従ったと言っていた。
何れにせよ、不公平な状況は避けていくべきであり、円満な解決を目指せば安心できるはずだ。日頃から心掛けていけば、終活もきっと円満に終わるものと思われる。そのためには、事前に専門家に相談すれば、必ず力になってくれるはずだ。