何時の時代、どの場所でも家族間の問題は枚挙に暇が無い。親が子を虐待する事件が後を絶たないが、逆に子が親を虐待する事件も多く報道されている。原因は様々なのだろうが、将来的には根絶して欲しいと願っている。
ところで、相続税の相談に立ち会っていると、特定の人物には絶対に相続させたくないので、何とかならないかという相談がある。これは、特定の人物に相続財産の全てを相続させたいとする状況と、ある意味真逆だ。しかし、相続税には遺留分というものがあるため、両方とも希望通りにはいかないのが通常だ。
「特定の誰かに相続させたい」と「特定の誰かに相続させたくない」は似ている
遺留分についての詳細な説明は省略するが、相続権と遺留分は切っても切れない関係であり、相続税法にも規定されているため、容易には覆すことができない。故に大きなトラブルに発展することが多く、裁判にて決着がついても納得がいかずに揉め続けた例もある。だが、状況が許せばトラブルを回避するだけでなく、希望通りにいく場合もあるのだ。
自分の息子(長男)には、何があっても相続させたくないと、言っていたご家族が居た。話を聞いてみると、長男が両親に対して酷い虐待をしていただけではなく、お金や家電製品等も盗んでいたとのこと。盗難については、警察に被害届けを出していて、問題なく受理されたと言っていたので、相当なものだったのだろう。この場合も例に漏れず遺留分により、相続財産の何割かを長男に渡さなければならない。如何なる理由があろうとも、相続税法に規定されている以上は仕方ない。ただし、一定の要件を満たせば、相続権並びに遺留分を停止させることができる。
家庭裁判所に相続廃除を申し立て認められる必要がある
結論を言えば、相続廃除の申立てを家庭裁判所に起こすことだ。相続廃除とは、申立てをした際、指定した個人(相続人)の相続権を完全に剥奪することを言う。剥奪される場合とは、家庭裁判所が申立てをされた個人について、相続人として相応しくないと判断した場合となる。相続廃除が家庭裁判所に認められた場合、相続権は一切無くなるため、必然的に遺留分も無くなる。遺留分について請求の申立てをしても棄却されることとなる。では、家庭裁判所に剥奪を認めさせる一定の要件とは何だろうか。それは次のとおりだ。
(1)被相続人(前述の場合だと両親)に虐待や重大な侮辱行為があった。
(2)失踪していた等、被相続人や他の家族を顧みなかった。
(3)被相続人の財産を盗難した、故意に散財した等。
認められるかどうかは、被相続人にかけた迷惑の度合いによって決まる
早い話が、被相続人に対して多大な迷惑をかけたことが認められた場合だ。
ただし、家庭裁判所も事実関係について詳細に調査する。両親は虐待と言っていても、長男としては言い争いをしていただけと認識していて、実態は長男の主張の通りだったら、当然家庭裁判所は、両親の主張は一切認めない。
慎重に判断しつつ事を進めないといけないが、何よりも自分達だけで悩まず、早い段階で専門家に相談し、解決策を練る方が得策と考える。そして、安心できる終活を目指して欲しい。