覚悟はしていても、葬儀の下調べや準備というものを具体的に進めるということはなかなか難しい。
昨今では元気なうちに自分の葬儀の準備をしておくという終活なるものが流行しているが、それが近親者など自分以外の誰かのものとなると、罪悪感のようなものが付きまといなかなか実行に移せないことが多いのではなかろうか。
形式やしきたりとは違った参列者の要望
当然だが、葬儀の喪主をやる機会というのは生前葬以外では、故人が自分以外の誰か、主に配偶者や親である場合に多く訪れる。
前述した理由から殆どの人は葬儀の知識はなく、結果的には葬儀屋などに言われるままに済ませるケースというのが多いのだろう。
知識と経験が豊富な専門家に任せるというのも悪くはない、とは思う。餅は餅屋と言うし、形式やしきたりについては多少下調べをした素人よりも遥かに勝る知識があるだろう。
しかし実際に私と家族が喪主をやってみた際、形式やしきたり以外にも参列者に求められるものがあるのだと思い知った。
火葬を終えるまでの間、食事を済ませるか済ませないか問題
一つは火葬場での待機中についてのことである。
打ち合わせの際、葬儀屋は火葬が済むまでの間は参列者は乾き物等を食べて時間を潰し、終わってから全員で斎場に戻って来てから会食をするのが一般的だと言われた。
私はそれまで二度同じ火葬場へ行った経験があったのだが、どちらも火葬中に食事をしたと記憶していた。しかし葬儀屋の言う形式が一般的ならばそうするべきか、と思っていたところで、たまたま自宅に尋ねて来た親戚の「早く済ませて帰った方が楽だ」という意見から、やはり火葬場で昼食を摂ることとなった。
今にして思えば葬儀屋の話は会食が出来ない火葬場も含めた上での一般論だったのだろうが、その親戚の意見は一参列者としても喪主側としても率直な希望と言えるだろう。
香典返しで使用するカタログギフトに肉や魚は禁忌とされているが…
もう一つは香典返しの選択についてだ。
参列者に当日配る物とは別に、香典が高額だった方への香典返しを手配するために葬儀後に某老舗デパートの担当者と自宅で打ち合わせをした。
いくつかの家にはカタログギフトを贈ることにしたのだが、担当者の話では、肉、魚、昆布、鰹節、酒類を香典返しに贈ることはタブーとされているそうで、それらを避けた食品類のカタログギフトは用意がないという。
ではその形式を重んじて食品類のないカタログギフトを贈ろうということになったのだが、後日の法要の際にその親戚に、食べ物の方が良かった、と不満をこぼされてしまい後悔した。
改めて調べ直してみると貰う側の人気No. 1は食べ物で、タブーとされる食品類を扱っていてもカタログギフトを贈るケースが増えているらしい。
ちなみに香典返しに松坂牛を推している広告もあり、こういったしきたりもこの先何年残るものなのかよくわからない。
何を大事にするかによって、しきたりを優先するかしないかも変わるでしょう
家によって家族によって、葬儀に求められるものは形式やしきたりである場合もあれば、合理性が求められる場合もある。
具体的な準備をすることは困難であるが、こういったコラムや周囲の体験談を集めておくだけでもある程度失敗は避けられるのではないだろうか。
個人的な体験談に過ぎないが、いつか喪主となる読者の役に立てられたなら幸いである。