私は香典を送る立場になるよりも、受け取る立場になる機会の方を早く迎えた。
それまで葬儀というものに縁がなかったのだが、香典を送る立場になる前にその相場というものを知ることが出来たのはある意味幸運と言えるのかもしれない。
具体的な金額についてはネット検索すれば誰でも知ることが出来るし、私の認識と変わらない結果が出ているように思われる。
しかし香典について、実際に葬儀に参列した経験のある人と直接話をしているとそれとは違った答えが返ってくることもある。
東北地方での香典の金額相場は?
一つは東北地方の葬儀に参列した知人の話である。一般的な葬儀と同じように受付で香典を渡した後で、葬儀に参列し、その後の会食の会場入り口に再び受付のような場所が現れそこで参列者が再び香典袋を渡していたというのだ。想像してみるとまるでご祝儀袋を渡す結婚披露宴のような光景だ。
他の参列者は二度目の香典を払う準備をしていたようなのだが、そんなことは想像していなかった知人は慌てて財布の中から最初の香典と同額の札をティッシュに包んで出したそうである。これがその家の風習なのか地方の風習なのか定かではないが、葬儀には予備の香典袋を持っていく方が無難なのかもしれないと思った。
山陰地方での香典の金額相場は?
二つ目は山陰地方の葬儀に参列した知人の話で、私の認識していた相場よりも数千円安かったものだ。その理由は「高いと故人の死を喜んでいるようになって失礼だから、やや安くする」というもので、相手の気持ちを思いやるという日本人独特の「お察し文化」故のもののように思える。
しかし親戚や知人の経験をリサーチしてみても一般的な葬儀は殆どが赤字であり、葬儀を執り行ったのが故人や遺族の希望だったとしてもやはり赤字は少ない方がいい。勿論高額となると、他の参列者とは別の香典返しが必要となって却って喪主の手を煩わせてしまうこともあるし気も遣わせてしまう。だから相場より高い香典には注意が必要ではあるが、わざわざ安くすることはないのではと、どうしても思ってしまう。
ちなみに新札を香典に使うと失礼とする「お察し文化」もあるが、受け取った香典全てをまとめて管理した経験から言って、誰が新札を使ったのかそもそも新札があったのか、チェックしていないしそんなことにいちいち気分を害するような余裕は喪主にはない、と個人的には思う。
地縁ある人に確認するのが一番間違いない香典の相場
香典は家、地方、そして故人との関係によって金額が変わっていくものである。慣れない土地での葬儀に参列する際は、地縁のある人に予め確認を取っておいた方が良いのかもしれない。
しかし使い古された表現かもしれないが、大切なのは「気持ち」ということではないだろうか。葬儀に参列する際は大人として恥ずかしい行動を取りたくないと神経質になりがちだが、故人を偲ぶ気持ちさえあれば、遺族の気分を著しく害してしまうことはないのではと私は考えている。