長引くコロナ禍、自宅で過ごす時間を愛犬や愛猫に癒された人々は実に多い。また、動画サイトやSNSの利用で動物関連の可愛らしい動画や画像を楽しむ人々は益々増えている。昨今では、小型犬の人気に伴ない、室内犬を飼育する世帯が増え日本の犬・猫推計飼育頭数は2020年時点で1,813万3千頭に達し(一般社団法人ペットフード協会2020年12月調査分)全世帯の約1割が犬や猫を含めたペットを飼育していると言われている。
「うちの子」と表現されるほどに人との関係が密なペット
今回は、そんな家族同然の愛犬・愛描の埋葬について考えてみたい。現在では、我が子のように愛犬・愛描へ接する飼い主も多く、他者との会話のなかで「うちの子」とその存在を表現する方も多い。また、出張等で自宅を空ける際は、離ればなれに過ごす愛犬・愛猫の為にペットホテルを利用する飼い主も増え、もはや我が子同然、家族同然といった存在である。
共葬は法的に問題なく、ペットの遺骨は副葬品として納骨
しかし、大切な存在である愛犬・愛猫の死後については、どのような扱いとなるのか、あまり認知されていないのが実情だ。法律では、飼い主とペットを一緒に埋葬すること(共葬)は禁止されていない。人間の葬儀や埋葬については、厚生労働省の「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)に定められており、通常は「墓地」に埋葬されるのが一般的だ。一方、ペットの遺骸は人間の遺体とは異なり、法律上では「一般廃棄物」と同等の扱いとなる。そのため、愛犬・愛描を飼い主と同じお墓に埋葬する際は、故人が愛用した「副葬品」として骨壷へ納骨される事となる。
公営や民間の霊園では共葬が難しい傾向がある
前述した、法律上(墓埋法)の「墓地」とは、お墓を建てるために行政の許可を受けている場所を指す。これに対し「霊園」と表記される場所は、自治体が運営する公営霊園や公益法人が管理する民営霊園が該当し、寺院内のお墓であれば寺院墓地と称されることが多い。公営霊園や民営霊園にも定めらた規則があり、ペットの埋葬を禁止してる場合、その納骨は不可とされる。また、墓埋法では墓地へのペットの納骨は認められているが、その土地の伝統や住民の宗教感情に配慮した独自の規則が制定されているケースも多く、行政の許可を受けた「墓地」であっても、ペットの共葬が禁止されている場所もある。
共葬が不許可となっている背景
その1つの背景として、仏教用語に「畜生」という言葉があり、かつては「悪事を働くと、畜生道に堕ちる」という概念があった為、こうした宗教感情や地域ごとの風習も含め、公営や民間の「霊園」では独自の墓地規則が定められたとされる。現在ではペットの埋葬を一切禁止している霊園もあれば、エリアを区切って埋葬ができる霊園もあり、少数ではあるが人間とペットの「共葬」が可能な霊園が徐々に増えつつある。
共葬できることを知らない人は約8割
ペットの火葬や納骨の申し込みも、近年は増加傾向にある。しかし、その一方で2020年に行われたある調査では(町田いずみ浄苑フォレストパーク2020年1月実施分)「ペットも共葬できるお墓があることを知っている」と回答したのは約2割程度の人々で、およそ8割の人々は「知らない」と回答しており、まだまだ認知度が低いのが実情だ。
同調査では、ペットの死を経験した飼い主に「遺骨の埋葬法」について尋ねているが「自宅の庭など私有地に埋葬した」という回答が最も多く、次いで「ペット用の霊園や納骨堂へ埋葬した」「自宅に遺骨を保管している」「自身もしくは家族の霊園に一緒に埋葬した」「海などに散骨した」という回答が得られている。約7割の飼い主が、愛犬や愛猫の死後、何かしらの対応を施しているが「共葬」に関する情報はまだまだ行き届いてはいない。
共葬の注意点
たくさんのお墓が集まる霊園にて、愛犬や愛描との共葬を希望される場合、霊園は「使用者の共有スペース」であるという認識が必要だ。墓埋法では、人間の遺骨は基本的に霊園に埋葬される為、所は人が眠る場所と定義づけされるのが一般的である。愛犬や愛描などペットを人と共に供養し、埋葬したいという心情は多くの人に理解される反面、動物が苦手な方も墓所を使用されているという点に配慮が必要となる。また、動物の遺骨が近くに埋葬されることで他の使用者の宗教感情が損なわれる場合がある点についても理解が必要である。
最後に…
日常生活で、リードの使用や入場可否エリアなど「ペットと人間が共存するためのルール」が設けられているように、霊園についても、様々な方々が使用する公共の場と捉えれば、ペットとの共葬にも一定のルールが必須となる。コロナ禍で我々1人1人の死生観が問われる今、葬儀の形式も多様化している。今後は葬儀後に愛犬・愛猫との「共葬」について検討される方も増えるであろう。その際は、埋葬先のルールやマナーに配慮した行動を心掛けたい。