建碑祝いという言葉をご存じだろうか。あまり聞き慣れないように思う方もいるだろう。建碑祝いとは、簡単にいえば、「お墓を建てたことをお祝いする」というものだ。では、建碑祝いとは何か、実際にする場合の注意点、またその始まりなどをみていこう。
お墓を建てることは、縁起が良いこととされている
お墓を生前に建てることは、まるでその人の死期が近づいているようだとか、その人の死を願うようだとか、なんとなく不謹慎なイメージがただよう。しかし、生前建墓は実は縁起がよいとされている。そしてこれを「寿陵」という。この寿陵の起源、歴史は、はるか飛鳥時代にまでさかのぼる。
生前建墓は聖徳太子から
日本で初めて生前建墓を行ったのは、聖徳太子といわれているが、その起源自体は中国である。中国では、「陵」の字には「みささぎ」や「はか」の読みがあり、「皇帝のお墓」の意味で使われていた。そして「寿陵」は「長寿」「家庭円満」「子孫繁栄」を招く、縁起のよいこととされた。また、仏教においても、自分の位牌やお墓を準備し法事を行って冥福を祈ることを「逆修(ぎゃくしゅ)」という。これによって得られる功徳は大きく、非常な幸福を招くとされている。
生前建墓の手順:場所決め
実際にその寿陵墓の建立を考えるのならば、まずはどこに建てたいのかを決めておこう。たとえば、公営霊園だと、お骨がなければ認められないこともある。希望する霊園には、事前に寿陵の可否を確認しておくことだ。場所が決まった後は、実際に現地に向かい、交通の利便性、霊園の雰囲気や立地条件などを見ておくとよい。通いづらいところだと、お参りから足が遠のくこともありうる。公共交通機関の本数も調べておくと安心だ。車なら、駐車場の有無や、コインパーキングが近くにあるかを確認しよう。
生前建墓の手順:墓石選び
場所が決まったら、墓石を選ぶ。この墓石は自分の好きなものにすることも可能だ。たとえば、ゴルフが好きならゴルフボール。読書が好きなら本とめがね。デザインだけでなく、好きな言葉を彫ることもできる。墓石屋さんに相談して、納得のいくものを選ぼう。
生前建墓の手順:開眼法要
仏教では新しい位牌、墓石を作ったときには「開眼法要」を行う。「魂入れ」ともいう。寿陵の場合、同時に行う必要はない。しかし、寿陵墓を建てたときにすませると、費用の面においてものちの負担は少なくなる。
建碑祝いの送り方と相場
開眼法要の際、お寺に依頼して親族を招待するとよいだろう。寿陵墓は縁起のよいものである。招待されたら、ご祝儀袋に「建立祝」と書く。金額は間柄にもよるが、5,000円〜1万円程度がよいだろう。開眼法要が終わったあとはお墓としての存在が確立する。彼岸やお盆などには、お参りにいこう。墓石の状態を確認することも必要だ。そのとき、掃除もしておくとなおよい。
生前建墓は家族の負担を減らす
人間はいつ死ぬかわからない。しかし、自分の好きな場所で、好きなデザインのお墓に入れると考えると、なんとなく安らいだ気持ちになるだろう。また、生前にそうした手続きをすませておくと、あとに残る家族の負担もぐっと減らせる。何より、事前にお墓を建てておくと、終の住処を手に入れたという、絶対的な安心感を持てる。だからこそ、そのときまでの人生をよりよく生きようと、前向きな気持ちにもなれるのだ。そう考えると、寿陵墓は人生を肯定的に生きるための、古代の知恵なのかもしれない。