昨年、新型コロナウイルスによりお亡くなりになってしまった志村けんさんのご家族が、顔を見る事もできずに火葬・・・というニュースを見て、コロナでお亡くなりになられた方は、死後24時間以内に火葬をされてしまうという事を知った方が多いのではないだろうか。大切な人を失った悲しみに加えて、最後のお別れも通常の形で迎えることができない。どうして、満足なお別れができないまま火葬をされてしまうのか。また本当に、火葬をしなければならないのか?これに関わる感染症の分類と新型コロナウイルスとの関係性についてまとめた。
墓埋法は死後24時間以内の火葬を禁止している
日本では、「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」に、「埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない」という記載が存在する。これは、死亡判定を受けた人が蘇生する可能性が全くないことを確認するためである。しかし新型コロナウィルスで亡くなると、24時間以内に火葬しなければならない。
しかし感染症法は罹患した感染症次第では24時間以内の火葬を認めている
感染症法第30条3項に一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、24時間以内に火葬し、又は埋葬することができるという記載がある。ではどのような感染症があるのか分類をまとめてみた。
【1類感染症(極めて危険性の高い感染症)】
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう(=天然痘)、南米出血熱、ペスト
マールブルグ病、ラッサ熱
【2類感染症(危険性の高い感染症)】
急性灰白髄炎、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ(H5N1)
【3類感染症(集団発生の可能性)】
コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症(O-157)、腸チフス、パラチフス
【4類感染症(動物や飲食物などを通し感染する。人から人への感染はない)】
E型肝炎、A型肝炎、横熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ(H5N1を除く)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病など
【5類感染症(人から人への感染あり)】
インフルエンザ(烏インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)、クリブトスポリジウム症、後天性免疫不全症侯群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症など
新型コロナウイルスはどの感染症に分類されるのか?
新型コロナウイルスは現在指定感染症に分類されている。指定感染症とは、感染症法に記載があり、「指定感染症」は、新しい感染症への対策を迅速に法に基づき行うために、期限付きで運用できるようにするためにつくられている分類であると同時に、一類感染症と同等の対応ができることになる。
例えば、入院の勧告・措置、就業制限、建物の立ち入り制限・封鎖・交通の制限、診断・死亡したときに医師による届け出、汚染された場所の消毒、死体の移動制限等が挙げられる。指定感染症は、期限を最大2年間とし、今後上記1~5類どこかの分類に指定されることとなる。その期限は2022年1月末であるが、今後は、1~5類ではなく新たな類型が必要とも議論されている。
新型コロナウイルスで亡くなられた方は必ず火葬しなければならないのか?
令和2年7月29日に厚生労働省および、経済産業省から発行された「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン(PDF)」には、質問に対する回答がされている。
【新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の遺体は、24 時間以内に火葬することができるとされており、必須ではありません】
ちなみに遺体からの感染リスクが低いという根拠も記載されている。
今後、2021年の1月末の段階で1~3に指定された場合には、やはり原則としては24時間以内の火葬を推奨される流れになるだろう。このように、24時間以内の火葬は必須ではないと記載されてはいるが、現在、残念ながらご遺族は故人のお顔を見てのお別れはかなわない。筆者としては新しい感染症の分類を行っていただき、遺体からの感染についてのリスクがない証明を科学的根拠に基づいてしっかりと行っていただくことで、ご遺族がきちんと、お別れできるようにしていただきたいと思う。