「僧侶は結婚してはいけない」というイメージを持っている人も多いかもしれない。しかし、日本は明治時代から僧侶の妻帯は許可されている。むしろ「結婚して後継ぎを残さなければならない」という世襲制度が根強く、少子化や多様化の進む現代社会とは相反する面も大きい。そのような現状もあって、現在の日本では「寺の後継者不足」が寺院における大きな問題となっており、お寺に生まれることは、ときに恋愛や結婚における障害となってしまうこともある。今回は、そんな「お寺」ならではの問題が描かれた恋愛漫画を紹介したい。作品を通じて、日本のお寺事情に一人でも多く興味を持ってくれたら幸いである。
「5時から9時まで」相原実貴(小学館)全16巻
ドラマ化された作品であるため、知っている人も多いかもしれない。海外ドラマのような生活を夢見る英会話教師の主人公と、僧侶の恋愛模様を中心として、周囲の人間関係を描いた作品となっている。最初は反発していたものの、主人公は次第に僧侶の彼に惹かれていく。しかし海外生活と仕事でのスキルアップを目指したい主人公にとって、彼と結婚して「寺の嫁」になることは、夢をあきらめることにほかならない。恋愛と仕事の間で揺れる、キャリアウーマンの葛藤が描かれた作品である。女性にとって、仕事のキャリアと結婚における問題は、ただでさえ課題である。ましてや相手が僧侶となれば、余計に人生に重くのしかかってくる。そんな主人公の葛藤に共感できる社会人女性も多いかもしれない。
「5時から9時まで」相原実貴(小学館)全16巻
「寺ガール」水沢めぐみ(集英社)全3巻
お寺に生まれた三姉妹の恋愛模様を描いた作品である。好きな人から「医者への道をあきらめて寺に入ってもいい」と告白されて自分の将来に悩む長女、彼氏に家がお寺であることを知られたくない次女、牧師の息子を好きになってしまった三女、と彼女たちの恋愛には三者三様に「家がお寺」であることが絡んでくる。「5時から9時まで」のような「お坊さんとの恋愛」を描く作品とは異なり、本作は「寺生まれの女子の恋愛」がストーリの主軸であることが最大の特徴である。彼女たちの誰かは、僧侶の男性と結婚して寺の跡を継がなければいけない。自分自身が僧侶となるわけではないとはいえ、その人生には必ず「家がお寺」ということが付きまとう。それぞれに自分なりの答えを出していく三姉妹の成長に注目だ。
「寺ガール」水沢めぐみ(集英社)全3巻