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宗教に依るのではなく、宗教を道具として活用するという考え方

未来(生活)が見えない不安と、確実に来る未来(死)への恐れ。科学では解決できない問題に対応するために、宗教を道具として「活用」することはできないだろうか。

宗教に依るのではなく、宗教を道具として活用するという考え方

宗教を選ばざるを得ない状況は存在する

堀川恵子のルポルタージュ「教誨師」(講談社)にこのような場面が描かれている。

「教誨の面接が始まって半年もすると、カウは『お試し』で同時に面接を受けていた三つの宗派から、渡邉の浄土真宗を選んでいる。ただ、最後まで二つの選択肢を前にグズグズ迷った。〜中略〜カウは渋々、浄土真宗に決めた」(「教誨師」76ページ)

教誨師は死刑囚の精神的安定のために神仏の教えを諭す宗教者である。この場面では死刑囚(女性)が「お試し」に三つの仏教宗派の教誨師と面接し、「グズグズ迷った」挙げ句「渋々」浄土真宗を選んだのであった。あたかも死刑囚が宗教の「お品書き」を見て迷った末に選んでいるかのような描写が興味深い。

かつて宗教は生活の一部で、そこに当然のように存在していた

本来、宗教とは生活の一部であった。多くの家は寺の檀家であり神社の氏子であった。お宮参り、葬儀、祭り、盆、暦など、生活に密着しているものであった。そうした宗教儀礼が薄まってきた昨今においても、勧誘をされたり、本を読んで感銘を受けたりと宗教との関わりは様々である。しかし、宗教の選択を迫られて「渋々」どれかを「選ぶ」などということはほとんどないだろう。死を間近に控えた死刑囚ならではであるが、必要に迫られて何らかの宗教を選ぶというプラグマティック(実用的)な態度は、本質的には死刑囚と変わらない我々にも応用できないだろうか。

宗教の効果

死刑囚が死に直面している人たちというなら、その時を知らされていないだけで我々は全員死刑囚である。事故や突然死を除けば、いずれ終末期を迎える。そのとき理性が健在であるなら、死を受容するまでの葛藤、スピリチュアルペインと呼ばれる状態に陥る可能性が高い。普通の人間が死を恐れるのは自己が消滅する未知の恐怖である。しかし生死を超えた超越的存在に依ることのできる人には、その先が待っている。天国・極楽という人もいれば霊界や転生の存在を信じている人もいる。何が真実かはわからないが、とにかく信仰を持つことで苦痛の中に希望を見出すことはできるだろう。

死が間近でなくても宗教を利用しない手立てはないがそのハードルは高い

これは遺された人にとっても同じことだ。宗教やスピリチュアルな世界と触れることで苦痛の軽減は期待できる。また宗教は死に際してだけではなく、生きる上にも支えとなり指針となる。超越的な存在はこの世を超えたものであるから万能である。これほどいいことずくめなら、是非宗教を始めようと思ってもよさそうなものだ。ところがそう簡単にはいかない。我々は容易には非科学的な信仰を持てないように教育されている。それどころか慣習とは別の特定の宗教に対する偏見を持つ人は少なくない。

宗教のいいとこ取り

素直に神仏を崇め、これぞ真理と思えるならそれで良いがそう簡単にはいかない。そもそも宗教間どころか、同じ宗教でも様々な派に分かれている。霊の存在を認める宗教もあれば無我を唱える宗教もある。一体どれが本当なのか。だから宗教など信用できないとなる。そこで宗教多元主義の考えが有効になると思われる。

ジョン・ヒックの宗教多元主義とは

宗教多元主義(Religious Pluralism)は他宗教との対話比較などを通じて互いの存在価値を認め合う立場である。ジョン・ヒック(1922〜2012)は宗教多元主義の代表的人物であり、ヒックの思想をめぐって宗教多元主義は様々な様相を展開している。ヒックの主張は著書のタイトルにもなっている「神は多くの名を持つ」に尽きる。我々人間は超越的な真理(究極的リアリティ)に対して様々な形で応答するというものである。究極的な存在は風土、文化、言語といった地域、民族らのフィルターを通して様々な形に変容していく。キリスト教ではゴッド、イスラム教ならアッラー、仏教では縁起・空、といった具合である。

本稿では多元主義そのものには深く掘り下げないが、元々日本人の宗教文化も神道、仏教、儒教、道教などが渾然となっている。近年では結婚式やクリスマスなど、キリスト教すら飲み込もうとするなど多元主義的な土壌があるといえるだろう。ヒックは宗教多元主義によって排他的な宗教間の対話、他宗教の共生といった問題に取り組んでいた。我々はこの理論を「宗教のお品書き」の根拠として援用してもよいのではないか。つまりどれを選んでも究極的には同じであるから、お品書きから自分に合った宗教を好みで選べばよいのである。

道具としての宗教

ヒックの宗教多元主義には問題もある。そもそもが究極的リアリティなるものは何なのか。そんなものが存在するのか。人智では計り知れないものであるなら、何故我々がその実在を想定できるのか。究極的リアリティへの批判は、ヒック式多元主義が第一歩からつまずくことになる。とはいえ、学問としてはともかく宗教を道具としてプラグマティックに考えるなら感性に任せても構わないのではないか。神なる究極的存在があるなら、人間との差は人間とアリ以上のものだと思われる。アリにとっては突如現れた人間の巨大な脚は理解を超えるものだろう。しかし人間がアリよりは賢いとするなら、そのわけのわからない不条理な、そして大いなる存在を想像することくらいはできるはずだ。人間自身が神でない以上、究極的リアリティがあってもおかしくはない。

都合よく宗教を利用する

死刑囚のようにそれが必要であるなら、神仏やあの世の存在を信じた方がその人の救いになるなら、宗教を有効な道具として利用してもよいのではないか。一方で死にたい、消えてしまいたいと願う人にとって死後に続きがあるのは都合が悪い。そのような人は「無神論教」を選べばよいのである。また、オウム真理教事件を見てもわかるように、宗教に免疫を持たない科学主義者ほど、神秘的な体験などによって世界観が一転する危険がある。宗教を死を克服するための道具として選ぶある意味冷めた姿勢は、そのような盲信を防ぐことになる効果も期待できるかもしれない。

渋々選んだ死刑囚の最後の望みとは

宗教を道具として活用するなど、真摯に道を追究している宗教者、信仰者からすればとんでもない罰当たりな発想だろう。神学者であるヒックの意図と合致するのかもわからない。しかし我々には生きる知恵と、死ぬ智慧が必要である。渋々選んだ死刑囚は執行の、まさに直前、死刑の延長を望んだという。そして次に訪れた最後の瞬間には穏やかな表情であったと教誨師は語っている。その間、何分何秒程だったのかはわからないが、そこにこそ宗教を選んだ最大の効用があったのではないだろうか。

参考資料

■堀川恵子「教誨師」講談社(2014)
■ジョン・ヒック著/間瀬啓允訳「神は多くの名前をもつ―新しい宗教的多元論」岩波書店(1986)
■ジョン・ヒック著/間瀬啓允訳「宗教多元主義 宗教理解のパラダイム変換」法藏館(1990)
■間瀬啓允「現代の宗教哲学」勁草書房(1994)

ライター

渡邉 昇

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