我が家には、ビニールの封が開けられることのなかった「御仏前」と書かれた封筒があります。
なぜかと言うと、つい先日お葬式のお香典を包むために買ったところ、よくよく調べてみるとそれは「法要」で使われるものだと判明。
正しくは「御霊前」と書かれているものを使わなければならないようで、慌てて買い直したのでした。
これまで生きてきて、法要に出席することがほとんどなく、今回封筒を買ったあとももちろんそんな機会はなかったので、結果買ったままの真新しい姿で我が家に保管されているわけです。
それぞれの使い道は?
「御霊前」と「御仏前」、まずなにが違うかと言えばそれはその見たまま、「霊」か「仏」かというところ。わたしは無知なので、どちらでも同じ意味合いのものだと思い、「霊」は神道、「仏」は仏教と勝手に決めつけたわけです。日本は仏教が多いから「仏」であれば間違いないだろうと、すっかり大きな勘違いをして購入してしまったのでした。
しかし、そうは言っても一応礼儀を重んじる日本人。そして人目も気にする日本人。やはり重々しい雰囲気の葬儀で失礼をするわけにはいかないと、先に買った「仏」のほうの封筒が入っているビニール包装の「使い方」説明書きを確認してみました。買う前に見なさいよ、と思われるでしょうね。わたしも後からそう反省しました。
「御仏前」の用途は、仏式の法事・法要。そのように書いてありました。四十九日を過ぎてから使うものだそうです。それ以前は「もちろん御霊前」です。
「霊」と「仏」の違いを理解すればもう忘れません!
さて、では「霊」と「仏」の違いとはなんなのでしょうか?
まず日本で行われる葬儀では、仏教がメインとされているようです。その仏教では、亡くなってから四十九日までは「霊」となってこの世とあの世をさまようとされています。その期間を中陰(ちゅういん)と言います。なので、四十九日までは「御霊前」なのだとか。
そして四十九日で中陰期間が満了し「仏」になります。実はなんとこの四十九日の法要で、亡くなった方の来世の行き先が決まるのだとか。そう聞くと、わたしは仏教徒ではないですが、きちんとしてあげないといけないんじゃないかと考えてしまいます。亡くなった後も、その人のことを心配して供養するとは、なんと素敵な考え方なんでしょう。しかしながら、よくよく自分がいかに仏教や、死者に対する儀式について無知であったかと思い知らされます。
宗派によっては「御霊前」が使えないので注意!
さてここまでは「御霊前」と「御仏前」の違いについて書いてきましたが、実は注意しなければならないことがあります。みなさんもご存知の通り、仏教とひとくちに言っても、たくさんの宗派があります。その宗派によっては、御霊前が使えなかったりするのです。
有名な宗派のひとつ、浄土真宗の教えでは、亡くなるとすぐに「仏」になるんだそうです。「霊」の期間なし。ということは、四十九日を迎える前でも「御霊前」は間違いなのです。なので、お通夜や葬儀に参列する場合は、事前に宗派を確認することが必要です。
とはいえ、人の死というものは予期せずいきなり訪れたりするものです。確認する余裕などない、ということも大いにありえるという考えから、どの宗派、はたまたキリスト教でも「御霊前」であれば致し方ないという向きもあるそうです。
香典とは『線香やお花などの香の代わりに霊前に供える金品』
日本独自の文化「香典」。
その意味は『線香やお花などの香の代わりに霊前に供える金品』ということです。もちろん死者を悼む気持ちもありますが、一方では、きちんと故人を弔うためには何かと出費がかさむであろうから、という手助けの意味合いもあります。
仏教がおおもとにあるとはいえ、独自の葬儀の仕方、流儀をはぐくんできた日本人。その源となっているのは、お互いを思いやる気持ち、なのではないでしょうか。そう考えると、いままで義務のように感じてやってきたことも、心を込めてすることができるようになるかもしれませんね。