ご親族が亡くなり葬儀はなんとか無事済ませたけれど、お墓がないのでどうしよう……という知人のつぶやきを先日耳にしました。
それに対して「焦らないで、じっくり考えて選んだほうがいいよ」というアドバイスが多数入ります。
看病と臨終、そして葬儀といろいろありすぎて身も心もクタクタな遺族にとって、「お墓がない」問題は重すぎます。
お墓の引越しを改葬といいます
いずれは解決しなければならないことかもしれませんが、ここから先は焦ることはありません。
終の棲家は熟慮して選びましょう。
なぜなら、一旦お墓に入ってしまうと、引っ越しがそう簡単ではないからです。
郷里が遠くて墓参りが大変、あるいはお墓の近くに親族もおらず地縁も薄くなってきていて自宅近くにお墓を移したいという方も多いと思います。お墓の引っ越しは「改葬」といい、それには様々な手続きや書類が必要になってきます。
とても複雑な改葬手続き
まず、新しいお墓探しですが、大都市に住んでいる場合、近場で条件に合うものを見つけるのはなかなか大変だと思います。予算はもちろんですが、宗教や宗派などもありますので、どこでもいいというわけにはまいりません。
また、すでに埋葬されているのがお寺の墓だった場合は、まずご住職さんに改葬したいという意向を話して内諾をいただかねばなりません。当然のことですが、お寺では亡くなった方々を管理し各種儀式を執り行っています。納骨の際にあれこれ手続していただいたように、今度は改葬許可申請書への捺印などをお願いせねばなりません。それを新しい墓所の永代使用許可証や受入証明書などとともに地域の役所に出して、改葬許可証が発行されます。
先祖代々の墓のようになっている場合は、すべての遺体遺骨についての申告が必要です。今のお墓から遺骨を取り出すときも法要を行いますし、移転先でも納骨式に替わる儀式あるいは式典等があるでしょう。もちろん、ご親戚などに話を通し、改葬について納得していただくことも肝心です。
お墓探しは焦らずに慎重に!
とある自治体の改葬許可申請書を見たことがありますが、その家で亡くなった方々の名前や性別、生年月日、死亡年月日などの一覧があり、今はこの世にはいないご先祖様も、きちんと所定の場所に”存在”しているのだなぁという思いを強くしました。
最近では、お墓を求めないで散骨する方も多いと思いますが、やはり、終の棲家があって、そこにわざわざ訪ね来て手を合わせる子孫や縁者、見守ってくれる宗教関係者がいるというのは、とてもありがたいことです。そして、残された者にとっては、ご先祖様と静かに対話できる究極のパワースポットが、お墓なのかもしれません。ですから、改葬されたい方は、手をかけて、そして時間もかけて最もよい形にして差し上げてください。これからお墓を探される方は、どうか焦らずに、よい場所にめぐりあえますように。