誰にも間違いはある。税理士や弁護士等の専門家であっても同様だ。問題は、間違いの後処理を如何に実施するかなのではないだろうか。各税金の申告納税について、申告漏れが多い税目がある。それは、相続税だ。
相続税は申告漏れが発生しやすい
亡くなった人(被相続人)が亡くなった日まで所有していた財産を被相続人の遺族が引き継ぎ(相続)、引き継がれた財産に課税されるのが相続税となる。相続税の性格上、どうしても申告漏れが発生し易いのだ。
タンス預金やへそくりなどが現金保有で後々発覚するケースが多い
筆者の経験だと、昭和四十年代に売却した土地の代金を金融機関に預けず現金のまま床下に隠していた老夫婦が居た。時間の経過と共に老夫婦は、親族に現金の所在について一切黙したまま亡くなってしまったのだ。平成になりご子息は老夫婦が居住していた住居を相続した。相続手続き自体は問題なく終了したかに見えたのだが、終了してから数年後住居をリフォームした際に床下から多額の現金がでてきて大騒ぎとなったのだ。当然、税務署にこの旨を説明し大きなトラブルとならずに済んだ。このような例は決して珍しいことではないのだ。
国税庁によると2018年の申告漏れは全体の86%にも及んだという
国税庁が発表した2018年における相続税の実地調査によれば、実地調査12463件の内、10684件で申告漏れが発生していたのだ。約86%に相当するものであり、如何に申告漏れが多いか理解できると考える。更に統計によると、申告漏れが最も多い相続財産は現金預金等となっていて、次いで不動産、有価証券の順となっている。
相続税の申告漏れが発覚したら速やかに修正申告することが重要
では、申告漏れが発生した場合はどうなるのかと言うと、相続税の修正申告をする。漏れがあった分を相続財産に加算し、再度相続税の計算をやり直してから申告するのだ。当然相続税も追加分が発生するので、早急に納税しなくてはならない。追加分を納税後、延滞税と加算税が税務署にて計算され、期日までに納付する旨の通知と共に納付書が送付されてくる。ここで注意点があるのだが追加分の納税は、可及的速やかに行うことだ。何故かと言うと、延滞税は遅延利息としての性格を有しているため、納税が遅延すればするほど延滞税が加算されてしまうからだ。また、申告漏れについて脱税行為であると見做された場合には、重加算税という罰金が課せられてしまうので、更に注意が必要となる。
事後の対応が重要
間違えてしまった場合、間違えてしまったことよりもその後の対応が最も重要である。申告漏れが発生してしまったら、正確かつ可及的速やかに修正申告を実施し、納税を済ませておくことだ。調査時にも無理な言い訳をせず、正直に失念していた等を申し述べれば大きなペナルティを課せられずに済むこともある。その際には、税理士や弁護士等の専門家に相談しつつ確りとした対策を取れば、最悪な状況にならずに済むものと考える。