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死者を悼む宗教儀式の「柿経(こけらきょう)」が現代ではすっかり廃れているが

冬になると、90年代半ばの「コギャル」や「アムラー」、古くは60年代末期のヒッピームーヴメントの象徴だったロングブーツが「復活!」と、「おしゃれコーデ」と併せてwebやファッション誌で紹介される。しかし冬が終わると、ロングブーツは「復活!」どころか、巷の流行を牽引する若者から殆ど見向きもされず「オバサンのシンボル」扱いと化す。

しかし、たとえ周りから「流行遅れ」「オバサン視」されたとしても「ロングブーツ」にこだわりたい人が年齢問わず一定数存在するように、すっかり廃れてしまったことであっても、死者を悼む、或いは信仰のために行われていたものがある。そのひとつが「柿経(こけらきょう)」だ。

死者を悼む宗教儀式の「柿経(こけらきょう)」が現代ではすっかり廃れているが

柿経(こけらきょう)とは

柿経とは、頭部を山形に切った薄い板に経文を写したもののことだ。そして柿経の「柿」だが、つくりの部分は、なべぶたに巾と書く「市」、果物の「柿」の字ではなく、横線「一」を引いて、「巾」と書く。縦線は「市」と異なり、一本で貫かれている。鉋(かんな)で木を削った際に出る、薄い削りかすや、薄く削った木そのものを意味する。ときどき「柿(こけら)」と「柿(かき)」は間違って使われてしまう場合もあるが、新たに完成した劇場などで初めて行われる公演やイベントなどのことを「こけら落とし公演」などと言い、今日でも廃れずに、残っている言葉のひとつだ。

柿経が盛んだった時代は?

主に平安末期から鎌倉・南北長期までに多く行われていたという柿経は、幅およそ1〜5cm、厚さ1mm以下の薄い板20本を1単位として、裏表に法華経などの経文が書写されたものだ。それらを重ね合わせて、下部を紐で縛る。更に、縛った部分を持つと、あたかも扇子のように広がるようにつくられている。これとよく似た、同時代に貴族階級を中心に流行した、扇に写経された扇面経と異なるのは、柿経の場合は、装飾性は全くなく、ある意味「庶民」的で、素朴かつ実用的なものだったことだ。

例えば、1986(昭和61)年、福岡県福岡市博多区の井相田(いそうだ)遺跡内の池から、室町時代のものとされる柿経が2141点出土した。そこからは法華経8巻、卒塔婆、笹塔婆、人骨、儀式に使われたと思しき土師器の皿なども発見されている。こうした柿経は福岡県内に限らず、全国で発見されている。

柿経を関する最古の記録

柿経に関する最古の記録は、鎌倉時代後期の13世紀末に成立したとされる、編著者不明の『百錬抄(ひゃくれんしょう)』第9の養和元(1181)年10月11日に、平資盛(すけもり、1161〜1185)の夢見によって、こけら葉に般若心経千巻を書いて供養し、それらを十二の俵に納めて東の海、西の海に流したというものだ。

柿経の目的とは

その目的は死者の追善供養や、生前に自分の死後の冥福を祈るために行う逆修(ぎゃくしゅ)供養などとされるが、寺院跡に加え、池や河川などの水辺からの出土例も多いという。後者の場合は、寺院の移転の際、「廃物」としてまとめて投棄されたり、『百錬抄』のように、具体的な動機は不明だが、雨乞い祈祷や海の向こうにあると信じられた極楽浄土への信仰の証、または水難・海難事故者の供養といった、仏教的な宗教儀礼の一環として、あえて池や河川に流したりされたと推察されるものもあるという。

江戸時代まで続いた柿経

このように、主に中世においてさかんに行われていた仏教儀礼と考えられている柿経だが、江戸期にも継続して行われていた。

東京都台東区池之端の、かつて寺院があった場所から、命日とおぼしい、「元禄3(1690)年4月5日」の日付、そして「広隆」の妻の戒名「穏譽妙安」が記され、「妙法蓮華経提婆達多品(みょうほうれんげきょうだいばだったほん)第十二」を楷書で書き写した103点の柿経が出土している。

また、中央区八丁堀からも、かつての寺域から、その寺の開山だった日清上人の十三回忌の追善供養のために法華経が書写された4000枚に及ぶ柿経が発見されている。これらは天正18(1590)年の江戸入府から、八丁堀近辺を焼き尽くした明暦3(1657)年の大火の間に作成されたものと考えられている。

柿経が長い年月に渡って行われてきた理由

これらからわかることは、政治体制、並びに首府が江戸に変わってしばらくしてからも、当時の人々は、中世においては当たり前に行われていた信仰儀礼を忘れたり、捨て去ったりすることなく、当たり前のように行っていたということだ。徳川家康入府までは「田舎」だったことから、文化的に江戸が「遅れていた」ことになるのか。それとも、意義ある宗教行為だからこそ、「流行」など関係なく、意義あることとして、前の時代を継承する形でなされていたことになるのか。

今、廃れているだけなのかもしれない

もちろん、今なお、個人または、ある限られた寺院において、昔ながらの、薄く細い木こと、柿への写経や埋納が行われているかもしれない。しかし、誰かの供養や仏教への帰依を証するために、大量の細い木に経文を書写したものを地下に埋納することはしない人々が大半だ。だからと言って、亡くなった人を悼む心や仏様への敬意を忘れ去っているわけではない。

掛け声ばかりで、毎年、今ひとつ盛り上がらない「ロングブーツ」だが、今シーズン、或いは来年、再来年はどうなるかわからない。そのように、柿経もいつの日にか、多くの人々の間にリバイバルするかもしれない。人の心はとにかく移り気で、どんな一流のマーケティング・リサーチャーや最新のAI技術をもって、TwitterやInstagramなどをくまなくリサーチしたところで実に掴みにくく、当然ながら、予測不可能なものだからだ。

参考資料

■経済雑誌社(編)『國史大系 第14巻 百錬抄 愚管抄 元享釈書』1897年 経済雑誌社
■辻村泰圓(編)『日本仏教民俗基礎資料集成 6 元興寺極楽坊 6』1975年 中央公論美術出版
■日本史用語大辞典編集委員会(編)『日本史用語大辞典 用語編』1978年 柏書房
■木内堯央「法華経信仰」上原昭一・金岡秀友・宮次男・宮田登・山折哲雄(編)『法華経の真理 (図説 日本仏教の世界)』1989年(5頁)集英社
■「アーカイブズ:企画展示 掘り出された仏教遺物 1993年10月5日〜1994年1月9日」『福岡市博物館』 
■湯山賢一「経木(きょうぎ)」今泉淑夫(編)『日本仏教史辞典』1999/2002年(203頁)吉川弘文館
■足立佳代「柿経」時枝務(編)『季刊 考古学』第97号 2006年11月1日(53-56頁)株式会社雄山閣
■「柿経」『台東区ホームページ』2013年8月14日
■立正大学博物館(編)『立正大学博物館 第10回特別展 経塚の諸相』2016年 立正大学博物館
■「八丁堀三丁目(第二次)遺跡内 朗惺寺跡出土 こけら経」『中央区ホームページ』2019年2月21日 
■「復活のロングブーツ『ボリューム落差』で履きこなす」『NIKKEI STYLE』2019年12月19日

ライター

鳥飼かおる

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