生きていれば、何ひとつ悩んだことがない人などは恐らくいないだろう。しかし悩みがあることを堂々とは話しづらいこともある。悩んでいる状況を悲観する人もいる。そうした話の聞き役になってくれるお坊さん達がいる。苦しい修行を積み仏道を知るお坊さんの言葉には、時として心に響くものがある。中には、重みのある言葉を聞き、悩んでいる自分を少しでも浄化したいような、そんな人もいるかもしれない。
ネット上でもお坊さんに相談が可能
お坊さんが受ける相談となると、宗教や法事法要に関することが多いが、それ以外の相談も数多く存在する。例えばお坊さん達がネットで一般の人の悩みに応えている「hasunoha」というサイトがある。
会員登録した一般の人は日常生活の悩みや疑問を伝え、登録されている全国各地のお坊さんがその質問に答える。その回答は、仏教の教えに基づいてされるというものだ。匿名で相談できて、回答したお坊さんの名前は明かされる。なおかつ、その相談と回答は登録していない人もサイト上で見ることができる。
相談内容は、法事や葬儀についてのみならず、死生観、恋愛、人間関係など幅広く、人生で感じ得るあらゆる悩みを聞いていると言える。今は質問が多く相談件数を制限しているほどだというのだから、このサイトがいかに今を生きる人たちの思いに応えているのかを察することができる。
相談を受ける場の変化
「悩みを相談するのであれば、直接話した方が気持ちが落ち着く」という人もいる。
約30年前から電話相談を始めている「一般社団法人 仏教情報センター仏」(東京)は、曜日別に宗派をわけて電話相談に対応している。宗派を分けてはいるが、悩みの内容は宗派で区別するわけではなく、仏事から人生相談まで応じている。
直接寺に来た人と語らいの場を設ける「みんなのお寺」(奈良・東京)は、宗派にこだわらず幅広い人達に寺に気軽に来てほしいという思いから始めたという。朝のお勤め、瞑想、写経など、お寺にできることはすべてここで実現できるようにと始めたもので、その1つに人生相談がある。
他に、お坊さんがお客を迎えて酒をふるまうバーもある。そこで交わされる話は、仏法から人生相談まで様々だ。
昔、お寺でお坊さんに相談することは日常だった。しかし檀家制度の変化と共に、お坊さんに直接相談する場所や機会は、様相を変えてきているようだ。
「生きる」ために話を聞く
お坊さんの中には「生きている人のためにもお寺がある」と、相談を受けている人がいる。その仕事は決して「死」に関わることだけではなく、今を生きる人のためにもあるからだ。だからこそ、広く人生相談にも乗っている。
人は、生きていれば何かしらの壁に当たる。悩みが生じることもある。それはいたって当然であり、悩みがあるのは今を生きている証とも言える。そう思うと、悩むことも誰かに悩みを吐露することも、悲観するものではない。それは、今を生きようとその人なりに進む道を模索している勇ましい姿なのだから。