相続税対策はいつから始めるか、何故早く始めた方が良いのか。筆者が税理士事務所に勤務していた際、頻繁に受けた相談であった。かつて、相続税は富裕層向けの税金で日本人の90%は無関係であるとされていた。事実そのとおりとなる面もあったが、平成27年に相続税の改正により事実上増税された結果、無関係とされていた人達にも相続税が課税される可能性が大幅に増加してしまったのだ。その原因の最大のものは、相続税の基礎控除額が40%削減されてしまったことによる。今回は、相続税の基礎控除額並びに相続税の税額控除について解説してみよう。
基礎控除額とは?相続税が発生する基準は?
相続税の基礎控除額(相続税法第11条他)とは、財産がこの金額を超えると相続税が課税される金額のことである。具体的には次のとおりだ。
基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人とは、相続の放棄をした人がいた場合、当該放棄がなかったものとした場合の相続人の数のことだ。相続財産が基礎控除額を超えた場合、超えた金額に相続税が課税されることになる。
相続税がかからない、非課税の財産とは?
次に相続税の非課税制度だ。相続財産のうち一定の金額までは社会通念上から非課税とされるものとなる。代表的なものを挙げてみる。
(1) 生命保険等の非課税限度額(相続税法第3条他)
500万円×法定相続人の数となる。生命保険の他に損害保険も含まれる。
(2) 死亡退職金の非課税限度額(相続税法第3条他)
500万円×法定相続人の数となる。
(3) 相続財産のうちお墓や仏壇の購入代金、更に葬儀の際のお香典(相続税法第13条他)。
相続税の税額控除とは
次に相続税の税額控除だ。一定の要件を満たす場合、相続税額から直接差し引かれる控除額のことだ。代表的なものを挙げてみる。
(1) 未成年者控除(相続税法第1条2項他)
法定相続人が未成年である場合、当該相続人が相続した日から20歳になるまでの年数1年につき、10万円を乗じた金額であり、1年未満の端数は切り捨てるとされている。例えば、相続開始時に法定相続人が14歳10ヶ月であれば、10ヶ月を切り捨てて控除額を計算する。但し、当該法定相続人は日本国籍を有すること等制限が設けられている。
(2) 障害者控除(相続税法第19条4項他)
相続人が85歳未満の障碍者である場合、当該相続人が相続した日から85歳になるまでの年数1年につき、10万円を乗じた金額であり、1年未満の端数は切り捨てることになる。なお、特別障害者(障害者手帳1・2級所持)の場合20万円となる。但し、当該相続人が相続開始時に日本国内に居住していること等制限が設けられている。
(3) 相次相続控除(相続税法第20条他)
10年以内に2回以上の相続があった場合、2回目の相続時に1回目に納付した相続税のうち一定額を控除できる制度だ。但し、規定が複雑のため当コラムでは概要のみにとどめておく。