葬儀や法事のときに来てもらい、お経をあげてくれる人のことを「お坊さん」と呼ぶ人は多い。では、その「お坊さん」とはいったい何者なのか。お坊さん以外にも様々な呼び方があるが、今回はそれらの由来を紹介する。
住職とは?法師とは?
今でこそ「お坊さん」というのは何となく僧侶全般のことをいうが、歴史的には「お坊さん」というのは坊主のことであり、坊主の元来の意味では寺院でいう住職のことだった。
それに対し特定の寺院に属さない僧のことを法師と呼んでいた。現代的な表現をすればフリーの僧侶といえるだろう。侍でいうところの浪人である。
坊主やお坊さんと呼ばれるようになった理由とは
坊主(ぼうず)といえば、現在では、髪が短い様を指して丸坊主だとか直接的に坊主という使われ方をするが、この呼び方はまさに剃髪した坊主の髪型が語源となっている。
そして、髪の長さは関係なく幼少の男子を指して坊主などと呼ぶのも、こういった呼称が定着した時代の幼児に髪の短い子が多かったのが影響しているといえる。
和尚とは?
「お坊さん」と類似した呼称で「和尚さん」、「和尚様」という呼び方もあるが、現代でのニュアンスとして、和尚も含めた全ての僧侶のことを「お坊さん」と呼び、住職の地位にある僧侶のことを「和尚さん」と呼ぶことが一般的になっている。本来の和尚を指す意味としても、やはり特定の高い地位にある僧侶のことを和尚と呼ぶ。
人々に安心と安らぎを与えてきた僧侶の存在
古来より、人として生まれ、生きてゆく中で一番の不安や恐怖とは死を迎えるということである。どんな偉大な人物でも死だけは逃れることができない。そして大切な人の死ほど辛く悲しいことはない。僧侶の役割とは、そのような人々の恐怖や悲しみを少しでも和らげてくれる存在であるといえる。そのような存在を人々は敬意と親しみを込めて「お坊さん」と呼ぶのではないだろうか。
葬儀でお経を唱えるのも、死者の霊を慰める一方、参列した人々はその姿と光景を見て故人の成仏を見届けられるという、悲しみから幾分開放され安心と安らぎを得ることができるのだ。
お説教の起源とは?
今でこそ、あまり良いイメージの沸かない「お説教」という言葉。
目上の人から「クドクドお説教された」などという使われ方をするが、これは本来、昔から「お坊さん」と呼ばれる人が、人生に悩む人、そしてその先にある恐怖、これらの人として避けられない問題を心の解決に導いてくれる、ありがたい「お話し」をしていただける事だった。
まさに「お坊さん」の仕事とは人々を、良き道に導いてくれるというものであり、今でも葬儀や法事で一堂を介する機会にそのことを教えてくれているのではないだろうか。