相続税の節税対策として、一般的に実施され、節税効果が高いものは生前贈与だ。しかし、ある悩みを理由に実施することを躊躇している方も多い。話を聞いてみると、思わず納得してしまったものだった。その悩みとは何だろうか。
それは「子供達にお金を渡すのは良い、でも、無駄遣いして直ぐに無くなってしまうのではないか。」これが悩みの内容だった。
突然大金を手にすると…
確かに人間の心理としては、一度に数百万円から数千万円の現金が手に入ると、欲望に負けて散財に走りがちになる。
事実筆者は、生前贈与や相続により大金を手にした結果散財を始めてしまい、周囲の意見に耳を貸さずに会社を辞め、更に散財を重ねてしまった人を幾人か見てきた。結果は、一人を除いた人達が数年で無一文になり、生活保護を受けざるを得なくなってしまった。この事態を防ぐために、無駄遣いさせない生前贈与について説明してみよう。
(1)生命保険の加入
結論から言えば、現金を渡さないか、渡すにしても制限をつけることだ。つまりは現金を別の資産に変える等、簡単に散財できないようにしてから贈与すれば良い。
一番簡単な方法は、贈与予定の現金で受贈者(被相続人の子供や孫)を契約者とした生命保険に加入することだ。契約者が受贈者となることにより、毎月保険料の支払いが発生する。故に受贈者は、現金を保険料の支払いに充当するため、勝手に使えなくなる。この場合、契約時に注意すべきは中途解約が出来にくい商品か、解約返戻金が少額な商品を選択して契約した方が良い。理由は、中途解約され現金を勝手に使われる可能性があるからだ。
(2)賃貸物件などにして贈与
次に、贈与予定の現金で賃貸物件を建設又は購入し、当該賃貸物件を贈与する方法だ。不動産は簡単に現金化することが困難であるし、返って賃貸収入も見込めるため、散財することを防止できるからだ。
この場合の注意点は、贈与者(被相続人)が建設又は購入し贈与者の名義にて登記し、その後に受贈者に贈与することだ。理由は、最初から受贈者の名義で登記した場合、建設または購入した資金の全額を贈与したと見做され、多額の贈与税が課税されるからだ。
最も重要な事は資産運用について興味をもって勉強すること
一般的な方法を二つあげてみたが、詳細は税理士と相談することを勧める。しかし、何と言っても一番重要な対策方法は、将来相続人となる子供や孫達に対して、お金の管理や投資、税金に関する知識を確りと教育することにある。
知識が身につけば、親が被相続人になったとしても、恐れる必要はない。終活と言えば、自分個人の問題であると考えてしまうかも知れないが、子供や孫にも自分が亡くなった後についてどうすべきかを考える必要があるものと思うが、如何だろうか。