家族が結婚式の披露宴に招待され、持ち帰った引き出物の中にお赤飯の折り詰が入っていることが今でも良くありますね。
お赤飯は小豆とササゲの紅がご飯にほんのりと赤い色を付け、いかにもおめでたい雰囲気を盛り上げます。
一方、お葬式や法事の時にもおこわが出されると聞くと驚きませんか?
葬儀や法事で振る舞うおこわは地域によって異なる
おこわと葬式。東京を中心とした関東圏ではあまり見当たらないので、ふとお葬式にもお赤飯かと思ってしましますがそうではありません。小豆やササゲの代わりに入っているのは黒豆、ご飯は勿論もち米で白い色をしています。名前は各地方でそれぞれ異なり、北海道では『黒飯(こくはん)』、金沢を中心とした北陸では『みたま』と呼ぶそうです。又、同じものを関西・大阪では『白蒸し(しろふかし)』と呼ぶそうです。
『白ふかし』にはもう一つバージョンがあって、福島あたりではもち米に白いんげんを入れて塩味をつけたものをこう呼ぶそうです。ただ私が海沿いの福島県で食べたおこわはしょうゆ味のものでした。長岡市でもこのしょうゆ味のおこわが出されるそうなので、地域・地域で細かく分かれているのかもしれません。
家族葬の流行によって登場回数の減ったおこわ
こう見てくるとかなりの地方でお葬式にももち米系の御飯が出されていることが分かります。おめでたい時に炊くお赤飯、悲しみに沈んだ時に炊く『黒飯』。喜びに付け悲しみに付け人々はもち米にその心を託してきたのでしょう。無論もち米がいつも口に入る食物ではなかったため、何かの『こと』があるときに心を分け合う良い食材だったのかもしれません。
私たちは豊かになり、また忙しくなりすぎました。お葬式も家族だけで済ませる家族葬が一般的になりつつあります。特に都会では近所との距離を置くことが多くなっています。
この東京あたりでは見かけない白いおこわを思うと、このようなものを持ち帰ってもらったり配ったりして、悲しみを近隣や縁者など周りの方たちと分け合って慰めあうのもいいのではないかという思いがしてくるのです。