弔辞。とむらいの言葉。
人生にそう何度もあることではないが、私たちは葬儀の場で死者へ言葉をかける立場になることがある。
「ご友人を代表して弔辞をお願いできますか」そんなことを言われると戸惑うほかないのだが、ものごとには必ずポイントがある。心に残る弔辞を作る上でのポイントとは?
長すぎてはダメ!
まず、長さ。
一般に弔辞は3分程度がいいと言われている。あまり長くては遺族も参列者も困ってしまうし、極端に短くては故人をしのぶよすがとならない。
3分という時間を文字数になおすと、四百字詰原稿用紙で2~3枚程度。
では、その文字数で、なにを、どんなふうに、どんな順に述べるか。これを考えるのが「構成」である。友人への弔辞を例に見てみると、およそ次のようになる。
(1)はじめに悲しみの気持を綴る
「友人代表としてお悔やみ申し上げます。○○君、突然の訃報に悲しみでいっぱいです」など、はじめに悲しみの気持を述べる。
(2)故人の思い出を綴る
「君とは高校の時に会って以来、友人として付き合ってきました。二年生の夏、君と一緒に……」。
ここでは、故人の思い出、エピソードを述べる。
その際、故人の人柄がしのばれるものがいいが、たとえば、明るい人柄を述べるにしても、「いつも明るい笑顔で」というだけではなく、いつ、どこで、何をした時に見た笑顔が忘れられない、というように、ひとつの思い出をピックアップして、その情景を具体的に述べると心に残るものとなる。
(3)遺族への気遣いを忘れずに
「ご家族の皆様に、心よりおくやみを申し述べます」
弔辞は故人に対するものであるが、実際に聞くのは遺族、参列者である。やはり、遺族への心づかい、参列者への気遣いを忘れずに。
(4)最後に別れの言葉を
「○○君、どうぞやすらかにお眠りください」など、故人への別れの言葉を述べて、弔辞をしめくくる。
声に出して読んでみましょう!
さて、以上の構成に従って弔辞を書き上げたなら、次に、声に出して読んでみることが「心に残る弔辞」のための重要なポイントになる。ただ目を通すだけではなく、声に出して読んでみるのである。そうすることで、構成のメリハリを確認できるうえ、文字としてはいいが耳に入りにくいもの、弔辞を書いたあなた自身が読みにくい言い回し、などをチェックすることができる。また、声に出して読む際は、語尾をしっかり読むことに留意したい。
実際に葬儀の場で弔辞を読むことになると、無意識のうちに早口になるケースが多い。語尾をしっかり読むことを心がけると、その点を防ぐことができ、遺族、参列者にとって聞きやすい弔辞となるからである。
最後に…
先年、漫画家の赤塚不二夫さんの葬儀で、タモリ氏の弔辞が話題になった。
歌舞伎の「勧進帳」を借りて、タモリ氏は何も書いていない紙を見ながら、8分におよぶ弔辞を述べ、参列者の感動を呼んだ。
しかし、こんなことは、タモリ氏だからできることで、いわば義経八艘飛びのような離れ業である。真似しようなんて考えないのが無難である。
心に残る弔辞にするため、構成をきちんと考えること、そして、弔辞を書き上げた後、声に出して読んでみることをおすすめしたい。