コロナ禍で企業の働き方改革による残業規制が進み、また、休業や勤務時間減少の影響で、副業をはじめとした追加就労意欲が増加している。そこで注目を集めているのがスポットワークだ。スポットワークとは、単発・短時間・短期間で働く働き方を指す。スポットワークの求人数はコロナ禍を機に急増し、前年比180%を超える勢いで伸び続けているという。近年の物価上昇の影響もあり、隙間時間を活用する労働者のニーズが高まっていることから、今後もスポットワークで働く「スポットワーカー」は増加する見込みだ。
介護業界に浸透しつつあるスポットワーク
そんなスポットワークの波は介護業界にも及んでいる。介護職員、介護現場の看護職員の人材不足は深刻化する一方だが、欠員をうまく埋められる仕組みとして活用されているのがスポットワークだ。様々な事情で介護現場を退いていたり、子育てなどでフルタイム勤務が難しかったりする「潜在看護職員」は少なくないという。スポットワークであれば、そうした介護・看護職員の隙間時間を有効活用したいというニーズと、人手不足の介護現場のニーズを結びつけることが出来る。双方のニーズは大きく、介護職員、看護職員専門のマッチングサービスも誕生している。
まずはスポットワークで働き、その後に長期雇用
離職率が高い傾向にある介護業界だが、最も多い離職原因は人間関係だ。低賃金できつい・汚い・危険という印象を持たれやすいことから、業務内容により離職率が高いと考えられやすい介護職だが、現場で働く職員は誇りとやりがいを感じて仕事をしている人が多いという。スポットワークは、離職原因になる人間関係の課題を解消し、介護現場の人材不足を解消する手段としても活用されている。スポットワークで短期アルバイトとして雇用することで、働く側も雇う側も、働きながら面接をする以上に深く互いを知ることができる。離職原因となりやすい人間関係も、労働者が実際に確認することができるため、短期アルバイトから長期雇用となった際の離職率が下がる傾向にあるという。このような”深い”マッチングを実現することにも繋がるスポットワークは、深刻な人材不足に悩まされる介護業界において、人材不足を根本的に解消し得る救世主となりつつある。
オンライン化する介護
コロナ禍による介護現場の変化は、スポットワークだけではない。老人ホームなどの高齢者施設では外部との接触を最小限にとどめるため、家族との面会やレクリエーション等を控える傾向にあるという。しかし、交流の機会を減らすことによる施設入居者のQOLの低下が課題となっており、面会を希望する家族からも改善を求める声があがっているという。そこで、施設入居者との交流の機会を増やすために始まっているのがオンライン介護だ。オンラインでレクリエーションを開催したり、家族との面会や、家族が遠隔で施設を見学できる仕組みを作ることで、入居者と外部との交流の機会を創出している。また、中にはオンラインを専門とした介護サービスも登場している。もちろん、オンラインでは入浴や食事のケアは出来ないが、オンラインでレクリエーションを開催したり他者との会話の時間を作ったりすることで、高齢者のQOLを高めることが出来るという。オンラインで完結する介護サービスが登場することで、労働者は好きな場所で働くことが出来るようになり、スポットワークもさらなる拡大が見込まれるだろう。