霊供膳(れいくぜん)は亡くなった方の食事として、お葬式や法事、お盆、お彼岸などにお供えする一汁三菜と白飯からなる精進料理である。霊供膳用のお膳があるご自宅は少ないと思うが、故人の霊をもてなし、感謝と供養の気持ちを表すことができる方法の一つである。宗派により並べ方が違っており、使用する食材に注意しなければならない。
霊供膳の食器の種類
霊供膳用の食器は、お膳と5つの器からなる。それぞれに蓋もついているが、サイズや深さがさまざまで間違えやすい。ここでは、椀と蓋の種類と置き場所、供える料理と注意点をまとめていく。また、場所については自分自身が食べると思って作成する位置で解説するが、供える時は仏様の方に向けていただきたい。
霊供膳の食器:飯椀
一番大きなお椀で、ご飯を入れる器。蓋は深いもののうち小さい方を用い、配置は向かって左の手前に置く。ご飯はてんこ盛りにする事がポイントである。小さい頃に怒られたのではないだろうか。しかし、仏様にはたくさん食べていただくためにたっぷりと盛る。ご飯を継ぐ際には、くっつくのを避けるため、初めに器を濡らしておくと良い。多少押し付けるようにし、丸さを出して盛り付けた後は、押し付けたご飯を回しながら上下ひっくり返すようにすると綺麗な形になる。
霊供膳の食器:汁椀
ご飯を入れる椀よりも小さいもので、お汁を入れる器。蓋は深いもののうち大きい方を用い、配置は向かって右の手前に置く。箸は汁の前に置く。汁はみそ汁でもおすましでもいいが動物性のものはNGの為、昆布やシイタケで出しを取る。
霊供膳の食器:平椀
平たい器で煮物を入れる。平たい蓋のうち大きいほうを用い、向かって左奥に配置する。煮物には飛竜頭(ひりょうず)や昆布巻き、こんにゃくなどを用いる。同じく動物性の食材は使用できない為、かまぼこや卵をのせてはいけない。
霊供膳の食器:高月・高杯(たかつき)
足がついた器で向かって右奥に配置し、蓋はない。なますや漬物など煮炊きしてない野菜料理をのせる。香の物を盛り付ける際には、3切れではなく2切れ盛り付けるようにする。(身を切るとならないよう)
霊供膳の食器:壺椀
壺のような形の器で、真ん中に配置する。平たい蓋のうち小さいほうを用いる。豆類や豆腐を使った料理である白和えなどを供える。
ちなみに高月と壺椀は逆でも良く、宗派により異なる。上記のように動物性の食材を使わない以外に、野菜でも五辛(ごしん)と呼ばれる刺激のある香味野菜は使用してはいけない。五辛はネギ、ニラ、ニンニク、らっきょう、小蒜(行者ニンニク)のことを指し、修行する僧侶にとって色欲や怒りを増長させるため使用してはいけいという。
霊供膳の供え方
霊供膳はお供えをするものの中で唯一、向きが仏様の方を向いている。例えば、お菓子や香典を供える際、自分たちの方に向けて供えるのではないだろうか。後で下げて自分たちでいただくものに関しては、このようにこちら側に向けて供える。そして蓋についてであるが、お供えする時は蓋をして持ち運ぶが、お供えをしたら、必ず蓋を取る。亡くなった方は香食(こうじき)といって、湯気や煙を食べるので、温かいうちに食べていただけるように供えるようにする。
その他の霊供膳の注意点
霊供膳をお供えした後は食べていいのか?料理をおさげした後に私たちが食べることで、故人様やご先祖様と食事を分かち合うという考え方がある。しかし、あくまで亡くなった方の食前なので手を付けないという考え方も存在し、寺によって考え方が異なっている。また、故人は死後に仏になると考えられているので浄土真宗では霊供膳を用いることはない。仏様だけでなくご本尊様用に2つ用意する事もある。このように、宗派や寺により故人の弔い方は様々である。そして、霊供膳自体もきちんと作ってお供えをする家庭は少なくなっているの。煮物や酢の物を一から作るのは大変ではあるが、お湯を入れるだけで作ることができるドライフーズの販売もされている。お供えをしたからと言って、食べていただけているのかどうかは目に見えないが、世の中には目に見えるものだけがすべてではない。ご先祖様に感謝をする気持ちを、ぜひ形にしてみてはいかがだろうか。