沖縄の一族はとても強い絆で結ばれ、家族に関連するたくさんの習俗が存在する。そしてお墓といえばとても大きいものがあることで有名である。そんな沖縄で個人墓が増えているという。その要因について調べてみた。
沖縄の門中とは
沖縄では男性を中心とした一族を門中(沖縄方言でむんちゅう)が存在し、同じ祖先でつながっている。しかし、門中は父方の血族でつながっている一族のため、父方の血ではない嫁や婿養子、養子・養女は門中ではない。門中の見分け方のひとつに、名乗り頭と呼ばれるものがある。沖縄の門中では、名前の最初に同じ文字を持つことがある。たとえば、沖縄で有名な具志堅用高さんの「用」は名乗り頭であり、父や兄の名前にも用がついている。
観光名所にもなる沖縄の門中墓とは
沖縄の墓はとても大きなことで有名である。古墳ほど大きなものもあり、何千人という門中の方の遺骨が納められている。糸満市にある沖縄最大の門中墓「幸地腹・赤比儀腹両門中墓」(こうちばら・あかひぎばらりょうむんちゅうばか)は、約1600坪もの敷地に墓があり観光名所にもなっているが、遺跡ではなく今も稼働するお墓であり、2つの門中の子孫は現在約5000人といわれている。ここには1つの当世墓(トーシー墓)と4つの仮墓(シルヒラシ墓)がある。沖縄ではこの門中墓に一族があつまり、まるでピクニックのようにみんなで食事をとるお墓参りはとても有名である。
女性に厳しい門中のしきたり
門中によっても見解がことなるのだが、とても複雑なしきたりが存在する。たとえば、子供が幼くして亡くなったり、自殺や事故死をした場合は、本墓に入ることができない。また兄弟は同じ墓にいれてはいけないというしきたりをもつ門中もあり、そのため、敷地内に納骨堂や子供墓を建てることもある。また門中は男性血族であるがゆえ、女性に関して亡くなった場合はどうなるのかという疑問が生じる。結婚した状態で亡くなったら旦那の門中墓に入ることとなるはずだが、子供を産んでいない場合や結婚をせずに亡くなった場合は、門中墓に入れないというケースも存在する。とくに、離婚した女性の場合、生家の門中墓にも、あたらしく結婚した家の門中墓にも入れないという問題が生じている。
沖縄の門中とお墓の関係
そんな沖縄では、近年門中墓に入りたくないと個人墓を建てるケースが増えている。このように離婚をした女性や、門中墓に入れない幼い子供を亡くした場合は一緒に墓に入れないならと個人墓を建てる。また、独身や若い世代、遠方のため門中墓の行事に参加できないといった方も、個人墓が増えている要因でもある。現在沖縄では本州と同じような霊園も増え、より気軽に個人墓を建てることができるようにもなっている。他にも、血縁関係なく友人や知人の集まりで入る「墓友」や、「兄弟墓」、「夫婦墓」など、さまざまな選択が可能となっている。