もはやSF映画はフィクションではなくなりつつあるのかもしれない。ブロックチェーン技術を利用して、新たな葬祭サービスが生まれた。今回はそのサービスを2つご紹介していく。
ブロックチェーンとは
仮想通貨を取引している人なら馴染み深い単語だろうが、おそらく「何となく聞いたことがある」という人のほうが多いだろう。ざっくり、簡単に説明すると、「複数のPCでオンライン上のデータを共有する際、改ざんを防ぐための技術」である。この技術を用いることで、第三者によるデータの改ざんは理論上ほぼ不可能とまでいわれている。高いセキュリティ性を持つブロックチェーンは、故人の想い、家族の想いを繋ぐことにも適していた。
遺言アプリ「Husime.com」
遺言アプリ「Husime.com」はAIからの質問に答えていくだけで、遺言書が作成できるアプリだ。最短15分で作れるという。身体の不自由な人でも使えるよう、音声入力にも対応している。作成したデータは上述したブロックチェーンによって保護され、改ざんされるリスクはほぼない。現状、作成されたデータそのものに法的効力はないが、これを基にして遺言書を作成すれば問題ないだろう。
会員制バーチャル墓地「viz PRiZMA」
会員制バーチャル墓地「viz PRiZMA」は東京芸術大学発のベンチャー企業「each tone」が開発したサービスだ。故人の虹彩データをブロックチェーンに記録し、そこから作成したアート作品をバーチャル空間に展示し、家族はいつでも手元の端末から故人のお墓に行けるという内容だ。会員はまず、生前にワークショップに参加する。そこで虹彩データを取り、アート作品を作る。同時に声や体の動きなど、本人の特徴も採集して、仮想墓地の作成に利用するという。これらのデータは会員の他界後に展示される。入会金として50万円必要だが、他界30年後まで利用できる。実際のお墓にかかる費用などは不要のため、利便性、経済性に優れるとしている。
故人をAIで再現する
AIといえば、以前、紅白歌合戦にて美空ひばりさんがその技術で再現され、出場していた。これには賛否両論あった。他に、淀川長治氏もCGによってCM出現し話題になった。ただし筆者はどちらかといえば、否定的な見方をしている。しかし、今回紹介した葬祭サービスを知ったとき、その立ち位置が揺らいだ。今後、AIによって、亡くなった家族が仮想空間に現れたとしたら、どうだろうか。声や振る舞いが生前のデータを基に、完全に再現されたなら、それを否定できるだろうか。倫理的な問題はあるが、やはり、「会えるなら、会いたい」と思ってしまう。先述した著名人が再現されている以上、それが一般化していくのは決して絵空事ではないように感じている。すべての命は海から生まれた、というが、ネットの海では死者が蘇るのだ。