新たに墓を作るとなると、頭に浮かぶのは価格や場所、そして石材をはじめとしたデザインについてだろう。石材には多くの種類があり約300種に及ぶという。今回は美しさ光る「万成石(まんなりいし)」を紹介する。
淡紅色の優しい風合いの万成石
万成石の一番の特徴は、その温かみのある淡いピンク色に白、黒が際立った華やかさである。通称「桜御影」と呼ばれ、墓石はもちろん公園や美術館、百貨店など公共性の高いものに使われることも多く、石碑などモニュメントととして作られたものは、街中でも薄れることなく強い存在感を出している。
万成石が墓石に適している理由
万成石の魅力はその美しさだけにとどまらない。淡紅色の石肌は一見柔らかそうに見えるが、その硬度は高く国産墓石材のなかでも硬い石として知られており、吸水性も低いため雨風に晒される墓石として適しているのだ。また、「万年成就する石」といわれる縁起のよさも人気の一つだ。
万成石を墓石に選んだ有名人
横浜市鶴見区の「總持寺」には万成石を墓石に選んだ著名人の一人、石原裕次郎の墓がある。親しみを込めて「裕ちゃんの墓処」と書かれた案内板が所々におかれ、令和においても昭和の大スターの墓に手を合わす多くのファンの存在が窺える。石原裕次郎の墓に採用された墓石は、万成石のなかでもピンク・白・黒、それぞれの色がよりはっきりと光り、経年変色の少ない「龍王石」と呼ばれる高級品である。そんな墓石の脇には妻・まき子氏の詩が彫られた石碑が置かれており、亡くなってもなお強い夫婦愛を感じさせられる。
万成石が使われている代表的な建築物
耐久性はもちろん、その色合いから汚れが目立たないため建築物の内外装にも使われている万成石。銀座のシンボルともいえる和光ビルもそのうちの一つだ。時計が銀座の町を見下ろしているような大きなこのビルは昭和7年の竣工以来何十年とこの街を見守ってきた。東京大空襲では文字盤数枚が割れたものの建物自体の被害はなく、終戦後は米軍の接収に使われ多くの米兵が買い物に利用したとされている。その後接収解除後日本人による使用が本格的に認められ、その後現在に至るまで高度経済成長期や、バブル期そして現在のコロナ危機など銀座に君臨し日本人の動向を見つめ続けている。
魅了し続ける石材 万成石
裕次郎の墓と和光ビルの共通点は万成石を使用しているというとこであるが、多くの人が訪れるという点もある。逞しい万成石は人を魅了してしまう美しさがあり、後世に残したいと思う物にはやはり最適な石材のようだ。