宗教と食は密接に関係している。たとえば、仏教では、動物の殺生を禁じられていたため、精進料理が生まれた。曹洞宗の大本山である永平寺では、開祖である道元の教えに基づいて、炊事も仏道修行の一環とされている。イスラム教では、戒律に基づいて、豚肉やアルコールを口にすることが禁じられている。インバウンド需要の高まりで、近年では日本でもイスラム教徒向けのハラルフード認証の飲食店も見かけるようになった。
食は宗教によって制限されていると思われがちだが
宗教から生まれた食文化は「戒律によって食べるものが制限された、質素で厳しいもの」と思われるかもしれない。しかし、「食」は制限されるばかりのものではなく、我々の生活を豊かにしてくれるものである。菓子店でよく見かける焼き菓子などは、キリスト教に由来するものも多くある。今回は、キリスト教とお菓子の歴史について触れたい。
キリスト教と食のかかわり
4世紀ごろ、世間から隠遁し、イエス・キリストの教えを実践するための組織が誕生した。やがて修道院が建てられるようになり、その中で共同生活を送りながら働き、祈るという修道生活の基盤ができあがるようになった。
修道院は領主として土地を支配しており、農民から小麦やぶどう、蜂蜜などを納めさせていた。また、自分たちも労働は祈りの一環として、農作業や家畜の世話を行い、パンやお菓子を作っていた。お菓子については「神と人間をつなぐもの」として食されていた。また、十字軍遠征をきっかけに、イスラム教から砂糖や香辛料が流入し、お菓子にも使われるようになっていった。
キリスト教から生まれたお菓子たち
特にキリスト教の祝日は、お菓子を食べて祝う習慣があり、時期が近付くと街にお菓子があふれるようになる。日本でもクリスマスに食べられる、丸太を模したケーキであるブッシュドノエルは、キリストの生誕時に暖炉で薪を燃やしたことが由来とされている。近年、日本でもその人気が出てきたカヌレは、フランス伝統の焼き菓子で、16世紀にボルドー地方の女子修道院で作られていたとされている。
日本で広く認知されているキリスト教のお菓子
日本にも修道院は全国各地に存在し、現在も修道女・修道士たちがお菓子を作って販売している。インターネットでの販売を行っている修道院も多くあり、家庭でその味を楽しむことも可能だ。祈りを込めて作られたお菓子たちを、ぜひ味わってみてはいかがだろうか。
参考資料
■「一冊でわかるキリスト教」船本弘毅・監修(成美堂出版)
■「フランス菓子からみる歴史」池上俊一(UTalk Report)