法事に行きたがらない女性は、現代ではごく一般的になっている。とくに結婚していて、夫側の法事には絶対に参加したくない…と考える妻は多い。その理由として姑と折り合いが悪いことが多く挙げられるが、女性らしい服装をして女性として参加することが難しいといったLGBTの事情があるケースも少なくない。今回はLGBTと法事法要について、当事者である筆者の知見も踏まえて考えていく。
冠婚葬祭におけるLGBTの肩身の狭さ
LGBTとは、セクシャルマイノリティの総称を指す。親世代が主導する冠婚葬祭の催しにおいて、男らしさや女らしさを避けて通ることは難しい。そのため、身体は女性でありながら性自認(心の性)が女性以外であった場合、服装選びに苦しむことが多い。
また、お茶出しなどの女性が担当することになりやすい仕事を嫌がる女性は多いが、性自認が女性でない場合は余計に苦痛に感じてしまうのは想像に難くない。
その上、親世代はLGBTに理解がない場合も多いため、ほとんど面識のない夫の親戚に堂々とカミングアウトできる人は少ないだろう。このように、LGBTの女性は、冠婚葬祭で非常に肩身の狭い思いをすることが多いのだ。
パートナーの適切な対応
例えば妻がLGBTであり、夫側の法事に行きたがらない場合はどうすればいいか。最も重要なのは、やはり出席を強要しないことだろう。自分の家のことは自分の家だけで執り行う、これだけで妻の負担は少なくなる。
もし妻が「LGBTであることを話してもいい」と考えているのであれば、夫が一人で親族に相談することも選択肢の一つだ。夫が一人で話すことが重要で、もし親族がLGBTに対する差別的な発言をしても妻の耳に入れずに済むからだ。
親族が妻の事情を受け入れ「女性らしさ」を強要しないと分かったならば、親交を深める機会を得られるかもしれない。逆に理解を得られなければ、法事には夫一人で行くという決断が望ましい。
つまるところ、妻がLGBTであり法事を嫌がっているならば、親族との関係が良くなるか悪くなるかは夫の立ち回り次第といえよう。
どうしても法事に行かなければならなくなったら
夫がこの問題に無関心であったり、非協力的である場合、どうしても法事に行かざるを得なくなってしまうこともある。
その際の礼服選びについてだが、黒いパンツスタイルのスーツでも特に問題はないだろう。日本ではまだ主流ではないが、パンツスタイルの礼服を扱うブランドも少しずつ出てきている。また、女性らしい体格が目立たなくなるオーダーメイドのパンツスタイルのスーツも登場した。選択肢は少ないものの、LGBT女性でも利用しやすいものが増えてきているため、頼ってみるのもいいだろう。
LGBT当事者がLGBTとして堂々と法事に出席できる日は来るのか
LGBTの持つ肩身の狭さは、筆者自身が日々感じていることだ。今日でも、冠婚葬祭の現場では生まれ持った身体の性によって役割を強要されることが多い。
しかし、自身の性のあり方と全く違う役割を演じることを強要されながら、法事の目的である「故人を偲ぶ」ことが果たして達せられるのだろうか。
どんな性を持つ人であっても堂々と参加できる、そんな新しい冠婚葬祭のあり方を、LGBT当事者として願わざるを得ない。