緊急事態宣言が撤回され、日本国内においては僅かながら収束の兆しが見えてきた新型コロナウイルス。とはいえ油断できない状況に変わりはないため、完全に収束するまで数年を要するのではないだろうか。社会にとって非常に大きな影響を与えたが、税務関係においても同様に大きな影響を与えている。所得税や法人税、消費税には二ヶ月間を限度として申告・納付期限の延長が認められた。相続税ではどうなのだろうか。今回は、相続税における新型コロナウイルスの取り扱いについて触れてみたい。
新型コロナウィルスの影響が認められる場合、相続税の申告・納付期限が延長
国税庁(PDF)によると、新型コロナウイルス感染症の影響により、相続人等が相続税の申告期限までに申告・納付ができない止むを得ない理由がある場合には、個別に申請することにより期限の個別延長が認められるとなっている。
相続税の申告・納付期限延長が認められる人とは
止むを得ない理由とは、感染症に感染した人や濃厚接触者となった人、感染症以外の原因で体調不良となり外出を控えている人、平日の在宅勤務を要請している自治体に居住する人等が感染症の影響により申告書の作成が困難な状況が該当するとされている。
相続税の申告・納付期限は具体的にどれくらいの期間の延長が認められるか
申請した場合、申告期限が延長されるが期間はどれくらいかと言うと、二ヶ月間となっている。正確には申告・納付が困難な止むを得ない理由がやんだ日から二ヶ月以内だ。
例を挙げると、感染症に感染した場合、完全に回復し検査も陰性となり医師から許可を得て、退院若しくは社会復帰してから二ヶ月間ということになる。相続税の申告書の作成が可能となった時点で申告書を作成し、提出と同時に相続税を納付すれば問題は無い。
相続税の申告・納付期限の延長申請方法
申告期限の延長申請だが、税務署に対して「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出する。申請書は国税庁のホームページからダウンロードし、自宅のパソコンから印刷したものを使用することもできるし、税務署に置いてあるものをそのまま使用すれば良い。また、何らかの理由で申請書を提出できない場合は、申告書作成時に申告書右上の余白部分に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記入すれば問題無い。
相続税の申告・納付期限の延長申請での注意点
ここで注意が必要な点がある。前述の個別に申請という文言だ。相続人一人が新型コロナウイルスに感染した場合、感染者のみが一人で申請書を提出すれば申請した相続人のみ期限が延長される。もし、相続人全員が感染または濃厚接触者となった場合、全員が申請しないと全員の期限の延長が認められなくなる。あくまでも個別、つまり相続人一人一人が申請をしなくてはならない点に注意して欲しい。
再度新型コロナウィルスに感染した場合
二ヶ月間の延長が認められた後、再度感染症が陽性となり再入院する等延長後であっても申告・納付が困難である場合、国税局にある国税局猶予相談センターに相談して欲しい。