発覚するたび騒ぎになり、たちまちニュースを染め上げるのが芸能人の不倫騒動だ。「いつから」、「誰と」、「どんなふうに」…そんな話題が毎日テレビやインターネットニュースに流れ、SNSには非難や擁護の言葉が溢れかえる。世間一般の認識でも、法的にも、不倫は罪だ。筆者が以前見たドラマでも、「不倫は地獄」だと言い現わされていた。そして、仏教的にも不倫は罪で、犯した者は地獄に堕ちるとされている。
八大地獄の中で不倫はどれに該当するか
「受験地獄」「地獄温泉」「この世の地獄」――など、物騒な言葉であるにもかかわらず、日常生活の中でも「地獄」という言葉はよく耳にする。おそらく日本人なら誰でも知っている言葉だが、地獄がどんな世界なのかを明確に答えられる人は少ないだろう。
地獄には「八大地獄」という分類があり、犯した罪によって落ちる場所が変わるとされている。
第一の等活地獄――生前に殺生をした者。
第二の黒蠅地獄――生前に窃盗を働いた者。
第三の衆合地獄――生前に邪な男女関係をなした者。
第四の叫喚地獄――生前に飲酒をした者。
第五の大叫喚地獄――生前に嘘を吐いた者。
第六の焦熱地獄――生前に正しくない思想を信じた者。
第七の大焦熱地獄――生前に、戒律をきちんと守っている僧侶を殺めた者。
第八の阿鼻地獄――生前に、「五逆罪」を犯し、教えを誹謗した者。
つまり不倫をしたものが堕ちるのは、3つ目の「衆合地獄」ということになる。
不倫したものが落ちる衆合地獄とは
女人禁制の寺院の存在などから男女関係に厳しいイメージがある仏教だが、それは出家信者の話であり、在家信者においては一夫一妻制の夫婦間における男女関係は認められている。
また仏教の戒律には「不邪淫戒(淫らな男女関係の禁止)」と「不偸盗戒(人のものを盗ってはならない)」があり、不倫はこの2つを破る行為であるため仏教的にも絶対にNGだ。よって不倫を行ったものは「衆合地獄」に落とされる。
衆合地獄は犯した邪淫の内容によって十六種類の地獄が用意されている。「妻以外の女性に手を出した者」は「無彼岸受苦処(むひがんじゅくしょ)」に落とされ、そこで火責め、刀責め、熱灰責め、病苦による責めなど、次から次へと責め苦を科される。さらにその刑期も106兆5800億年と途方もない長さだ。生前の悔悟や遺族の弔いにより刑期が縮まることもあるそうだが、それでも想像を絶する苦痛を味わうことになるだろう。
地獄という概念が誕生した時期とその目的
日本人の頭の中に地獄と言う観念を植え付けたものは、江戸時代に描かれた「地獄変」とよばれる、地獄の世界を極採色によって詳細にあらわした絵画であった。そして、これらの絵画の典拠とされたものが、平安時代の天台宗の僧侶であった源信によって書かれた『往生要集』という書物である。この書物は名前の通り「極楽浄土に往生するための方法のなかで重要なこと」を集めたものだ。
何故、そこに地獄の存在が恐ろしく、そして詳しく述べられているのか。それは読んでいる人に恐怖心を呼び起こさせ、なんとかしてでも極楽浄土に行かせてあげたいと願ったからであろう。
生きるも死ぬも地獄だらけの不倫
不倫は地獄だ。家族関係も友人関係も壊れ、様々な形での賠償が科される。そして死んだ後も本当の地獄にて凄まじい苦しみを味わうことになる。
時折「不倫は男の本能」などと言われることもあるが、人間は強い理性を持つ生き物だ。不倫に限らず、普通なら制御できる欲をしっかりと制御して、自分も他人も苦しめないよう生きることが理想だろう。