以前当コラムにおいて触れたが、所有者不明の土地の総面積が日本全国で九州に匹敵する程であるという。法制審議会では、所有者不明の土地が増加するのを防ぐ目的で、相続登記の義務化を検討していると言う。何故かと言うと、土地の所有者が不明である原因は、相続時において登記されていないことが多いからなのだ。今回は再度所有者不明の土地について触れてみたい。
相続登記がなされない理由
2019年12月現在において、相続登記自体は義務ではなく任意となっている。登記しなくても罰則規定が無く、むしろ登記手続きには登録免許税が課税されるだけでなく、様々な経費が発生するため、相続登記は忌避されることが多いのはこのためであろう。
また、相続した土地が遠方に所在する場合、相続登記の手続きのためにわざわざ所在地を管轄する法務局に行かねばならない負担を考えれば、返って相続登記をする理由が無いとも言える。言い換えれば、必ずしも相続登記をしなければいけないわけではないのならば、金員を支払ってまで面倒な手続きなどする必要はないと言ったところであろう。
相続登記がなされず所有者不明の土地は増加している
2016年における国土交通省の調査によると、登記簿上の所有者不明の土地は日本全体で20.1%(410万ヘクタール)とされ、更に2017年の法務省の調査では、最後の登記から90年以上経過している土地が都市部では0.4%であり、地方では7.0%であった。今後少子化や地方から首都圏等の大都市への人口移動等の原因によって、所有者不明の土地は増加する一方であると予想されている。
所有者不明の土地の何が問題か?
土地の所有者が不明であることの何が問題なのかと言うと、土地を売買する若しくは開発するには、国や都道府県、市町村であっても当該土地の所有者にことわりを入れない限りは一切の手続きが不能となるからだ。そうなると、土地の流動性が低下し経済が停滞すると言った悪影響がでてしまうからなのだ。因みに、所有者不明土地問題研究会の概算によれば、経済的損失が2017年~2040年までの累積で約6兆円になると言う。
相続登記を促すために、具体的にはどんな議論がなされているか
現在法制審議会にて検討されている内容についてだが、一部は既に法制化されているが今後は変更される可能性もある。既に法制化されているものとしては、登録免許税の免税だ。2018年4月1日から2021年3月31日までの間に、相続で土地を取得したがその登記をする前に死亡した者を登記名義人とする相続登記には、登録免許税を課さないことになっている。他にはまだ検討段階だが、一定期間内に相続登記をしない場合には罰則規定を設ける、相続登記の手続きの簡略化、遺産分割協議の期間制限等となっている。
最後に…
大きな災害に罹災したと言ったやむを得ない理由で相続登記しないのは例外だが、失念したとか面倒だからと言った理由ならば、速やかに相続登記した方が良いだろう。罰則規定が制定される前に是非とも相続登記をして欲しい。