個人商店を経営している個人事業主に対して課税される税金は、所得税並びに消費税、事業税となっている。店舗が個人所有ならば固定資産税が課税されることになる。個人事業主が亡くなり、個人事業主が所有していた店舗や備品、設備並びに在庫商品は、個人事業主の相続人に引き継がれることになる。そうなると、当然相続税が課税されることになるのだが、個人事業主の場合は他の人達とは状況が違ってくるのだ。
個人事業主が要件を満たすと相続税や贈与税の猶予や免除される
個人事業主が法令で定める要件を満たすと、相続税や贈与税を猶予、若しくは免除される制度がある。当該制度を事業承継税制と言う。事業承継税制は法人(有限会社や株式会社等)の経営者のみと思われることが多いのだが、事業を次世代に承継すると言う意味で個人事業主も事業承継税制の対象になっている。
法的には先代事業者が亡くなった結果廃業し、相続人である後継者が新規に開業することになる。新規に開業することで問題になるのは屋号の承継だが、先代事業者が屋号を商号登記していなければ問題無く承継できる。もし、商号登記していた場合は最悪当該商号が利用できなくなる可能性もあるため注意して欲しい。
相続税並びに贈与税が猶予、免除されるための要件
では、相続税並びに贈与税が猶予、免除されるための要件を見てみよう。
(1)事業を贈与した場合は、受贈者が贈与を受けた日まで三年以上事業に従事していること。
(2)事業を相続した場合は、相続開始の直前までに事業に従事していること。
(3)贈与税の申告期限(毎年三月十五日)までに開業届を所轄税務署に提出しており、更に所得税の青色申告(所得税法第2条他)の申請をし、所轄税務署から承認を受けていること。
(4)先代事業者が所轄税務署から所得税の青色申告の承認を受けていること。
特に(2)に注目して欲しいのだが、亡くなってしまってからでは当該制度の適用を受けることができないことが理解できるはずである。贈与においても同様に亡くなる前に対応することが必要であり、改めて相続並びに相続税対策は亡くなる前に実行するというのが鉄則なのだ。
注意点は?
ここで注意して欲しいことがある。先代事業者が廃業していた、または脱税等の問題で青色申告の承認を取り消されていた場合は、相続税並びに贈与税は免除されない。また、当該制度は2028年12月31日までの時限措置であるため、早目の対策が必要になるだろう。
猶予や免除されれば事業の承継や継続の難易度は下がる
法人・個人に限らず相続税並びに贈与税が猶予、免除されると事業の承継はしやすくなるのではないだろうか。後継者が居る場合は、是非活用して欲しい制度であるが要件を満たさなくてはならない。また、所得税の青色申告も要件が厳しく個人で判断するのは困難であると考えられる。もし、事業承継税制を活用したいと考えた場合は、税理士や弁護士等の専門家に相談すれば、より良い結果に繋がるものと考える。