フランスでは、11月1日に日本でいうお盆に値する「諸聖人の日」という祝日がある。その日に多くの人が墓参りを行う。そこでお墓にお供えするのはさぞかしバラのようなゴージャスな花なのではないだろうか、と思いきや、以外にも菊が好まれるようだ。日本と違い、切り花ではなく鉢置きするところが興味深い。11月1日にはあちらこちらで鉢植えの菊が売られている。日本では黄色、白が主流だが、フランスではそれに加えてピンクや紫、オレンジなど鮮やかな色とりどりの菊があるようだ。
フランスのお墓参りに菊が用いられる理由
フランスで菊をお供えする理由としてはちょうどシーズンなのと、11月という冬に差し掛かる寒さに耐えられるという理由からだそうだ。日本でも、菊をお墓参りに用いる理由として長持ちし、枯れるときも花びらが散りにくいという理由が挙げられる。菊というのは野外に強く、しかも色鮮やかなのが重宝されるのかもしれない。「諸聖人の日」に巷に溢れる菊だが、花束をプレゼントする機会の多いフランスでは、菊は花束としては疎遠されるようなのでご注意を。
一方、日本のお墓参りで菊が定番となっている理由は?
日本での菊は古来よりその香りと凛と咲く姿から格式の高い花とされており、「高貴」が花言葉となっている。そこから、仏様に最高の敬意を払うのにふさわしい菊がお供えされるようになったそうだ。
また菊は清々しい香りがする事から、邪気を払うとされているようだ。日本では9月9日の「重陽の節句」に菊を眺めながら「菊酒」を飲むというと長寿になると云われていた。菊酒は蒸した菊の花びらを日本酒に一晩漬け、香りを移して飲んだそうだ。(現在はただ花びらを散らした冷酒のようだが)
また漢方として使われていたようで、今でもお刺身の脇に添えられている菊には、殺菌の意味がある。なかなか食べるという事をした事がなかったが、菊を食べるとさらに栄養を得て、滋養が高まるらしい。
ただの仏花としての花という印象の強い菊。しかし、意外と身近なところで活躍しており、世界でも重宝されていると思うとちょっと愛着が湧いてきように感じる。
葬儀に使用される花は?
フランスでは、葬儀にて菊を飾るのかというと、そうではないようだ。お香典がない分、生花を持ち寄る事が多いようである。そこで使用される花は故人が好きな花をアレンジメントしたもの。色鮮やかな花束のようだ。(ただし10歳以下の故人の場合は白のみを使用するとか)なんとなく映画や写真などから赤いバラを携えているイメージがあるが、それには親族から故人へ愛を伝えるという意味合いがあるそうだ。
棘があり、葬儀の花として向かないとされていたバラだが、最近は日本でも故人が好んでいた花で祭壇を作るようになってきているようである。仏花として代表格な菊には日本古来の仏様への敬意の意味があるが、フランスのように故人を尊重して花を選ぶ時代にもなってきている。