平成30年度税制改正により、相続税法並びに相続税に直接関係のある民法が大きく改正された。その内事業承継税制(租税特別措置法第70条7項他)が注目を集めている。事業承継税制とは、非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除のことで、必要な要件を満たせば、贈与税並びに相続税が猶予又は免除される制度だ。
税制改正前と後ではどう違う?
改正前の税制だと、猶予又は免除の制限が設けられていたが、改正後には制限が撤廃された。また、改正前は納税を猶予する割合が80%までであったが、改正後は100%になる等大幅に緩和されたのだ。
10年間限定の特例措置ではあるが、今後も継続される可能性もあるので相続税対策、特に法人を経営されている方や不動産を多く所有する地主には魅力的であろう。
どれくらい猶予・免除される?
事業承継税制とは何かと言うと、法人の経営者が自身の後継者に株式を譲渡する際、生前贈与又は相続させる際に利用できる制度だ。一定の要件を満たせば贈与税ならば100%、相続税ならば80%まで猶予又は免除される。前述の改正により、相続税における80%の制限は撤廃され、100%とされた。
因みにこの場合の株式とは議決権つまり法人の経営に参加できる権利を有した普通株式であり、この株式を譲渡することで法人(事業)を次世代に承継することができるのだ。趣旨としては、業績が良く優れた技術を持つ中小企業が後継者不足から廃業せず、次世代に引き継がれるならば税制面で優遇することにある。
事業承継税制の贈与税での要件やメリットと注意点
最初に贈与税から解説すると、当該制度を受けることができる要件は次のとおり。
・法人は上場企業ではないこと。
・中小企業者(社会福祉法人等の特定法人並びに弁護士法人等の士業法人)に該当しないこと。
・風俗営業法人ではないこと。
・資産管理法人ではないこと(一定の要件を満たせば可)。
後継者である受贈者の要件は次のとおり。
・法人の代表権を有していること。
・贈与時に満20歳以上であること。
・法人役員に就任してから3年以上経過していること。
特例措置の適用を受ける場合、法人の後継者や承継時迄の経営見通し等を記載した特例承継計画を策定した後、税理士や商工会議所等の認定経営革新等支援機関の所見を記載した上で、2023年3月31日迄に法人本店所在地の都道府県知事に提出し確認を受ければ良い。
事業承継税制の相続税での要件やメリットと注意点
次に相続税を解説すると、法人の要件は贈与税と同一である。後継者である相続人の要件もほぼ同様であるが、相違点を挙げてみると次のとおり。相続開始の日の翌日から5ヶ月を経過する日において法人の代表権を有する事だ。また、他の手続きも同一の為省略する。
節税効果が非常に大きい事業承継税制
前述の要件を満たし、特例承継計画の確認を受けた場合、贈与税並びに相続税が全額猶予又は免除される。金額が大きいので節税効果が高い。要件も多く縛りも強いが一考に値するものと考える。その場合には、税理士や弁護士等の専門家に相談することをお忘れなく。