枕飾りとは?
枕飾りとは、故人が亡くなられてお通夜からお葬式までの間はご遺体が家や葬儀社の安置所等に安置されるため、枕元に簡易的な祭壇を作ります、それが、枕飾りです。葬儀の前に弔問に来てくださった方々がお焼香をしたり、礼拝をしたりできるよう設置されるものであり、また、この世からあの世へ旅立つ魂が、迷うことなく成仏するための道しるべとしての役割も持っています。体から離れて間もない魂は食欲など「現世に存在するさまざまな欲」への執着が解けず、この世へ残ろうとする傾向があると言われ、そのため、枕飾りや、僧侶による読経「枕経(まくらきょう)」「枕勤め(まくらづとめ)」によって魂を供養し、あの世へ導く必要があります。
枕飾りは、仏教、神道、キリスト教によってお供えするものが異なり、また同じ宗教でも宗派や地域よって異なります。
近年、枕飾りは葬儀社が準備をしてくれるケースが増え、すべてを遺族が整えることは少なくなってきました。葬儀社によっては、直葬、家族葬、自宅葬、一日葬、さまざまなプランにこの枕飾りを入れてくれています。
【仏教の枕飾り】
1.小さい机に白布をかける、もしくは白木の小机を用意。
2.香炉、ロウソク立て、花瓶、枕団子、一善飯、水を飾ります。
香炉、ロウソク立て、花瓶はまとめて「三具足(みつぐそく)」と呼ばれ、祭壇を作るために必要な道具、という意味があります。地域によって、これが3つではなく7つや8つ用意する場合もあります。香炉には線香を一本立て、台の左手前に置きます。花瓶に挿す花は仏花(樒(しきみ))を一本挿すのが風習です。樒には毒があるため悪霊が寄り付かないと言われています。無い場合は、菊、百合、水仙等を挿しても良いでしょう。
枕団子はあの世へ行く際のお弁当です。また、六道をめぐるという意味を込めて6個作る傾向があります。故人が好きだった食べ物を置きたい気持ちはあるでしょうが、仏教では、生臭いものを置くことを禁じられています、肉や魚などは控えましょう。白い紙の上に盛り、一善飯とともに台の中央付近へ置きます。
一善飯は、この世に未練を残すことのないように、との想いを込め、ご飯を山盛りに盛り付けますが、盛りが高いほど良いとされています。故人が生前使用していたお茶碗にご飯を山盛りにのせ、その頂上に箸を立てます。
水は湯呑茶碗、またはコップに水を入れましょう。
鈴(りん)は故人を供養する際に鳴らすための仏具です。
※線香や香炉、着火ライターなども葬儀プランに含まれていることが多いのですが、念のため覚えておきましょう。
なお浄土真宗では、一善飯(枕飯)やお団子を供えないとされています。これは、故人が阿弥陀如来のもとですぐに浄土へ旅立ち仏様になる、つまり、そこにはすでに存在しない、という考え方によるものです。
3.枕屏風を準備する
近年では屏風がある家も少なり、枕屏風の風習自体も見られなくなってきました。もともと枕屏風とは窓からの冷気を防ぐための背の低い屏風で、枕元に置き、逆さに立てます。「死は日常事ではない、逆さ事」という意味で逆さにします。
4.枕花
故人と親しかった方等から生花が届けられたら、枕元に飾りましょう。これを「枕花」と言います。
【神道の枕飾り】
1.「八足机(白木の台)」という儀式で使用する机の中心に、三方と言われる台を置く。
三方には、洗米・塩・水・お神酒を並べ、これらと一緒に故人の好物を供えることができます。仏教とは違い、肉や魚も大丈夫です)
2.その両側に榊(さかき)を入れた花瓶を置く。
【キリスト教の枕飾り】
キリスト教には枕飾りをする習慣がありません。その代わり、ご臨終直前に行なわれる儀式で枕飾りのようなものを作ることがあります。
1.白か黒の布で台を覆います。
2.台の上にロウソクや花、十字架や聖書、パン、水を供えます。
花の色、種類は決まっていませんが、白百合など「白い生花」を供えると良いでしょう。
※聖油供えられることもあります。聖油はご臨終の際、神父が故人の顔に塗るもので、聖油を塗ることによって生前に行なった罪の許しを乞い、安らかに眠るための儀式です。この儀式にちなみ、枕飾りとして置かれることもあります。
枕飾りをご遺族が用意するという機会は近年なかなかありません、しかし、もし家に道具があるなら、ご自身で行なうことにより故人が成仏する手助けをし見送ったという気持ちも強くなるでしょう。
しかし、ご臨終から通夜まではそれほど時間がないため、道具がない場合は、安価なものから高価なものまで揃っている道具をそれぞれ購入するよりは、葬儀社に依頼、最初からプラン内容に含まれている葬儀を選ぶのも良いかと思います。
枕飾りの豆知識:亡くなられたら北枕?
枕飾りは整い、ご遺体が安置されます。この時、ご遺体は北枕になっているでしょうか。
北枕、の持つ意味とは元々、お釈迦様が亡くなられた際に施された心遣いからきています。
お釈迦様は80歳の歳を迎えられた際、生まれ故郷へ帰りたいと故郷へ足を向けるのですが、毒キノコがあたったのか体を悪くされました。最期はサラソウジュの木の下でお亡くなりなりましたが、お弟子さんはお釈迦様が少しでも楽に過ごせるようにと、涼しい北の方角に頭を向けたのです。亡くなったから北に向けたのではなく、インドは暑いですから少しでも涼しい方へ、と北に向けたのです。そして、右脇を下へ、というのは左にある心臓が苦しくないように、という思いやりから出た姿勢なのです。
この時の様子は「頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)」と表されています。
呼吸しやすいよう楽なように、そして故郷の方に顔を向けて。なので、死ぬことを想定しての「北枕」ではなく、また「北」というのは縁起が悪いわけではないのです。
実際にご遺体を安置しようとする際、間取り等によりどうしても「北枕」が不可能な場合もありますが、その際には「西向きに頭がくるよう」安置しましょう。お釈迦様がご覧になっていた故郷は西だったからです。
また、生きている人間にとっても「北枕」というのは体に良く、「頭寒足熱」と言いますが、それを体現できるのが「北枕」なんです。
わたしたちは北半球に住んでおり、寒いのは北、温かのは南、つまり「北枕」で寝ると「頭寒足熱」、健康に良いことなんです。